夜、静かな夜

 最後の高3生徒と明日は微積の問題解説から入ろう、という打ちあわせ。時間との競争、凝縮されたタイトな時の流れに押しつぶされそうな圧迫感を感じている少年が、その抑圧をバネに飛躍できるかどうか、あと二週間で結果が出る。焦燥感が足元から競りあがってくる。もはや、消しきれぬ焦りなら、その焦りを楽しめばよい。悲壮感は何も解決しないのだから。
 「黒酢」を飲むと調子がよい、と別の少年が言った。すがるものがあるなら、何でもすがればよい。現実から目を反らさず、正面対峙するためには嫌になるくらいのエネルギーがいるのだから。
 自分に弱点があることを自覚できているものは、自分の長所しか知らないものに勝る。なぜなら、自分がどのような場合に自滅するか認識できていれば、それを回避する手段を工夫できるから。自分の長所しか知らないものは、安直に勝ちに行って、簡単に敗北する。なぜなら、最悪の場合を考えない行動は、かならず予想外の出来事に足元をすくわれるから。
 弱点こそは受験生の宝庫。ひとつひとつ潰してゆけばい。入試直前こそ苦手科目は伸びる。楽しいことだ。確実に実力がアップする学習が目の前に転がっている。遠慮せずに掴み取り、自分のものにすればいい。
 
 明日は24時間もある。