一夜明けて、きょうは広大附属福山中学校の合格発表

午後4時の発表と勘違いしていた。
だから、3時38分に最初のメールをいただいたときは、「?」と思ってあけた。
いきなり「附属合格しました」の文字。
最初の反応は「ギョエー」。心の準備がないと、かくも下品な反応しかできない。地が出るというか本性がばれるというか、とにかく奇襲攻撃だった。慌てて祝福メールを返信した。まぁ合格して当然だ、焼肉戦隊のボスがこけたら他の隊員はどうなる、と内心思いつつ、「おめでとうございます」と綴った。
数分後、電話が鳴った。今度は心の準備ができていた。聞こえてきたのは、ざわつく背景音、掲示板前からか、と思いつつ深呼吸していると、「Kです」と、ちょっと震えているもののしっかりした声、どちらともとれるので、はい、こんにちは、とマヌケな応答。「受かりました」の一声で、「うわぉうぉうぅ、おめでとう!!」と絶叫。算数が易化したことをぼやいていたポジティブ娘が、苦手な社会を克服して見事、合格。この子は、一度は「もう辞める」と宣言して退塾(休塾?)したこともあった。繊細な感受性の持ち主ゆえに、感情の振幅も大きく、お母様をてこずらせた事も一再ならずあったけれど、よく成長した。直前期は休憩時間になると焼肉戦隊で合唱し、子どもソプラノの声を塾じゅうに鳴り響かせた。おそらく、この半年福山市内で最もよく歌った中学受験生であったろう。
電話を切ってパソコンにもどると、着信2件。
「附属合格しました」の8文字。私立中学も市立中学も受験せず、附属がだめだったら公立中学に行く、と決めていた女子。しかし、気負いもなく、常に冷静沈着たんたんとしている非焼肉戦隊。お母様は、マイペースな生活態度を案じていらっしゃったけれど、ずば抜けた理解力と認識力をもち、類稀な表現力まで兼ね備えていたし、過去半年間の模試は高位安定、過去問演習は常に合格圏内だった。つい、先日(1月29日付け)、村上からお母様にあてたメールは次のとおり。
『(前略)すこぶる堅調で、今のところ、留意すべき瑕疵は何一つみあたらない状況です。たぶん彼女にとって、広大附属福山の受験など「どこ吹く風」という気分なのでしょう(笑)。しかし、毎回の演習後の自己評価もいたって正確かつ客観的で、けっしておごることなく冷静に自分の能力を見極めています。村上にはなんの心配の種もありません。今のまま、ありのまま、そのまま、受験してくだされば、必ずうまくいきます。余裕をもって堂々と入学試験に臨んでいただければ、と願っています』
まさにそのとおりの受験であったろう、と思う。祝福メールを返信した。
しかし、次のメールは痛かった。
虎チームの男子ムードメーカーだった少年からだった。残念だった。「中学からもっと努力する」という言葉を重く受け止めた。努力しなければならないのは、いつだって塾屋の方だ、と思いつつ返信した。
午後4時になった。連絡の来ない生徒に悪い予感を抱きつつ、中3S数学の授業を始めた。きょうは余弦定理の応用。生徒にひとり受験生の姉がいる。「弟は?何か連絡は?」「ありません」「誰と行ったの?」「父と母と」「あちゃー、もう30分以上たつよねぇ、やばいなぁ」と言いつつ、授業開始、気もそぞろで定番問題の解説をしようとして、頭の中が真っ白になっていることに気づく。「えぇ、すみません、ちょっと待ってね」と意味不明な時間稼ぎをする。やっと脳の血流が回復して問題が見える。大きな水車がごっとんと回るように解説をはじめた。そして数分後、駐車場に複数の車の停車音。来訪者の気配。恐る恐る01教室から顔を出すと、合格メール1号、焼肉戦隊ボスの笑顔。「おうおうおめでとう」と近寄ると、視界外の右、05教室の前に、件の弟君。うわっ、なんだこの鉢合わせ、と一瞬思ったその瞬間、「僕も受かってました」と笑顔で目を細める。意味もなく駆け寄り、バシバシ腕をたたき「うぉ、おめでとう!バッカヤロウ、連絡ないからダメかと思った、コノヤロー、よかったなぁ」と暴言乱発に、お母様やお父様が目に入った。おおっと恥じ入り、「おめでとうございましたぁ」とご挨拶して、そそくさと教室にもどった。もっとゆっくりと感謝のお言葉を述べるときであったろうに、あいかわらず心配りのきかない村上であった。
お姉さんに、「おめでとう、弟、愛かったよ」と告げつつ授業にもどった。満面の笑みに姉の家族を思いやる愛情を感じた。うーん、いい姉弟。
入れ違いに、歌うポジティブ娘が例によってとっとっとっとっとーと登場。実にすがすがしい顔、晴れやかな表情、デジカメで撮った自分の番号を見せてくれる。今夜は焼肉パーティだそうな。焼肉戦隊に栄光あれ!
午後4時半をまわり、「発表から1時間たったので、もうこの先はもう何の連絡もないでしょうねぇ」と言いつつ、証明問題を解いていると、自転車の止まる音、あれっと思って05教室に目をやると、いつもの毛糸の帽子をかぶった少年がやってくる。表情が読み取れない、心なしか表情がかたい!寒さで硬直しているのか、それとも、、、02教室に出ると、トイレの前で立ち止まった彼が、「きょう、附属の発表があって」、ここで、彼はいったん言葉を切って表現を捜した。その一瞬がどれほどの緊迫感を醸成したか、村上はほとんど呼吸を止め、全身を耳にして耐えた。「番号ありました!」
と、その刹那、緊張が遂にぷっつん切れて村上は激発し、右手にもっていた数1Aの教科書を床にたたきつけ、呆然と立っている少年に駆け寄り、無茶苦茶なことを言いながら、無茶苦茶なふるまいをして(ここに書くのはばかられる)、思いっきり祝福した。いやはや、彼は驚いたことだろう。手荒く喜んだあと「ご両親によろしく」「はーい」とやりとりして、教科書を拾って教室にもどった。
息を切らしながらも、中断多発の数学の授業はまだ続く。授業をしながら、もう外も黄昏始めたころだろう、と思っているとカーテン越しに、また車の停まる音が聞こえた。経過時間を考えると、これは辛い報告だろう、と憶測が先にたつ。どうふるまうべきか考えている暇もなく、ドンドンとドアを野太くノックする。このたたき方は、子どもではない、おっさんだ、でも何かいい響きだなぁ、ひょっとして、、、と思ってドアを開け、半身を乗り出すと、なんと虎チーム3人娘のひとり、いつも清楚なKさん。とろけそうな笑顔で「附属、うかってました」
「うわぁわぁわぁ、おめでとう!」ご近所迷惑もかえりみずに叫んでしまう。「うんうん、よかった、信じられなかったんだ?」と尋ねると、素直にこくりとうなづいた。どうしてそんなことを尋ねたかって?、だって顔には「いまだに信じられません」と書いてあった(笑)

以上、LECタイガース、広大附属福山中学合格報告一部始終。

村上の狂乱振りをじっと耐えて授業をうけてくれたKさん、Tさん、E君、T君、どうもありがとう。余弦定理は来週仕上げます。

きょう、入塾案内の電話をかけていただいた方、懇談中でしたのでお話できませんでした。すみません、宜しければ、また明日にでもご連絡ください。午後4:40以降でしたら、懇談も終わっていますので、お話できると思います。まことにすみませんでした。