小6の民族移動 その前と後

 小6だけ、学習進度の調節があって9月定例試験を10月3日に行った。
おかげで、3日の月曜日は、午後8時過ぎに危うくオーバーフロウをおこしかけた。
「先生、席がありません」
「にゃんだとぉ、おおおぉ、ちょっと待て、こっちへおいで、うん、ここ、座っといて、小6があと10分くらいで終わるから」ってぇことで、あらかじめ予想された事態ではあったのだが、一部村上がやりくりしないと、高校生がスムーズに席を確保できなくなる状況が生まれた。
 税理士のSさんには、「ひとりでやっとんじゃ、こんなに教室いらんじゃろ。無駄じゃろう」と毎月のように指摘されているけれど、ヘタレな塾屋には、席数の剰余性確保は必須事項、あれこれ心を砕く余裕がない。やりたいことが多すぎるのだろう。
 4日、試験結果の判明した小6は恒例の「民族移動」。成績順に従って席順が決まる。その直前には、必ず申告得点の修正を行う生徒がやってくる。
 曰く「先生、家で採点しなおしたら、4点上がりました」「ふぅん、じゃぁ申告用紙を修正しといて」などなど。総じて、修正申告はクールにたんたんとおこなわれる。
 ところが、その日の授業前、いきなり女子児童が近づいてきて切り出す。
「先生、わたし139」
「それじゃぁ高血圧だ。お前、130越えたら、トクホのお茶飲んだほうがいいぞ(笑)」
「違うってば、テストの点が下がったんだってば」
「知るか、そんなこと。いきなり139とか聞いたら、血圧のことかって思うだろうが」
「だから、ちがうぅぅ、紙貸して」
「よるな、近すぎる」
「ひどい、もうぉ、はよ貸して」
 適切な間合いで、ちゃんとした表現のできない幼い子が、得点を上手に修正申告できないことはままある。そんな時、ズルイ・ヒドイ・イジワル・ブサイクな塾屋はとぼける。受け入れられない言葉づかいや態度は忌避する姿勢を示す。

 小6は、成績順にカピバラチームとイリオモテヤマネコチームに分かれる。さらに、カピバラチームはカピとバラに。イリオモテヤマネコチームは、イリオモテとヤマネコに分けられ、演習プリントが細分化されたり、演習教室が移動したりする。

 去年までチーム名は、虎だのヤギだのウサギだのありふれた動物だった。(そもそもの出典は、昔々TVでやっていた『ロッテ歌のアルバム』からだったけれど、生徒には不評だった。「変な名前」として受け止められていた。そこで、ちょと変えた。「あいかわらず変な名前」として受け止められている。ただ、長めの名前にしたおかげで、二つに分離するには便利になった。虎を「ト」と「ラ」に分けてもねぇ。
 学力に応じた適切な演習をするためには、チームの細分化が避けられない。4名1チームぐらいがちょどいい。そういう意味で、今の小6は理想的。小5はちょっと多すぎ、小4はちょっと少なすぎ。
 小5は学力的に上位層が飛びぬけているので、まぁいい。小4も、これから新しく入ってくる人がかならず何名かいるだろうから、今ぐらいでちょうどいい。人数的にはどこもOK。今年の小学生は適性規模になっている。
 さて、しかし、「139」って、平均35点ないってこと。ニコニコしながら口にできる数字ではない。本人にその自覚があるのかないのか。おそらく、彼女なりにある。その自覚をあと三カ月で自信にするために、塾屋が厳しくその指導を問われる日々が続く。