誠之館 学校説明会(塾対象)

「来年度入試から、数学の問題が一部差し替えられて誠之館独自の問題になる」ということで、今年の説明会はテーマがはっきりしていた。
 「どうして数学?」が村上の野次馬的関心事一番だった。どうせ、誰かがきくだろう、と例年通り、最後尾の席でボーっとしていたら、、、
 次のような質疑応答があった。
「なぜ数学なのか」複数の塾の先生が重複しつつお尋ねになった。
はじめの回答者(まじめな先生だった、ちょっと説得力に欠けた)
「そもそもトップ校(県教委が指定した学力向上重点校)で各校独自入試をやろうということになった」
 →自発的に話し合って決めたのか、県教委の指示があったのか、それについては触れていらしゃらなかった。ただ、誠之館が独自に決断し実行しようとしているわけじゃない、ってことはわかった。横並び、みんなで一緒にやりましょうってことらしい。日本的な官僚組織の在り方を垣間見たような気がした、と言えば、言い過ぎか。本当はこんな面倒なことはしたくないのにしなきゃいけない、とは言えないネガティブな姿勢を読み取ったのも、ちょっとうがちすぎでしょうね。

「数学は、他の科目について制約が少ないから」
 →なんだ、作りやすいからってあっさり言っちゃえばいいのに、と思った。でも、ポリシーの欠けたことを言ってると、あとで問題になるかもしれない、と老婆心ながら心配になった。
 すると、
別の回答者が割り込んで補足(この方は、明瞭でシャープ)
「指導要領の改訂で、理数の学力を伸ばそう、という大前提がある。また誠之館では理系進学者がほぼ半数を占め、数学に対する関心が高い」とハキハキ回答。
 →ふぅん、そうかい、理念的裏付けがちゃんとあることをはっきりさせておこうってわけだ。そうじゃなきゃ、受験生の不安を煽るだけになりかねない。教科書的答弁で可もなく不可もなくだけど、こういう場面ではそうした正論がちゃんと言えるかどうかがポイントで、的を射た発言だったと思った。
 で、
「独自に作って差し替える問題は、どんな問題?どんなレベル?」 という質問がでた。
不明瞭な回答者「具体的には回答できない」→ そうだろうね。
シャープな回答者「これまでの問題より難しくするとかどうとかではなくて、誠之館高校が欲しい力を生徒が有しているかどうか見てみたい」→ ピンポーン、またも正論。
 入試問題は、受験生へのその学校からのメッセージ。ただし、今回のように一部差し替えで、どこまでおっしゃるような意図を具現化できるのか、はなはだ心もとない。ズバリ言ってしまえば机上の空論でしかないような気もする。しかし、理念そのものはそうあるべきで、堂々と言い続けなければならない大義名分が必要だと考える。そういう意味で、納得の発言だった。

 今回の入試問題一部差し替えで、実際的に受験生に特別の対策は不要だ。従来通り、正しく体系的にきちんとした学習を積み重ねれば、何も怖がることはない。いたずらに、独自問題を強調して、特別な取り組みが必要になったかのように考えると、数学偏重の受験準備に陥って、バランスを崩すだけ。誠之館の先生もおっしゃっていたとおり、内申点と五教科の総合点で合否は決定するので、数学の問題を一部差し替えて、独自問題を入れたからと言って、全体の合否に何か大きな影響を及ぼすとは考えられない。



 これは余談なのだけれど、アンケート用紙に珍しく記入して帰った。説明会の前半がつまらなくて、時間を持て余したのも一因ではあったけれど、ひと言言っておきたかったので、提出してきた。以下、記憶による再現。

 「生徒の意志を尊重しない進路指導が、直前期にはおこなわれているのではないか、と懸念しています。私大入学を決めた生徒や、浪人を決断した生徒にまで、国公立大学の受験を強要している事例を多々みかけます。実績作りに傾斜しすぎた指導は、ひずみ・ゆがみを生み出しかねません。意味のない合格実績作りを防止するためにも、合格者数と入学者数を併記してはいかがでしょうか」
(記憶に間違いがあったらごめんなさい)

 誠之館の国公立大学の合格者数は、荒っぽく言うと、たぶん300名中210名前後。その大雑把な内訳は、難関国立大学(旧帝大+一橋・神戸・東工大ぐらい?)に約25名。その次の約50名が広大・岡大。そして、その次の30名ぐらいが近県(中四国)の大学で、その次の30名がそれ以外の地方国立大学。だいたいここまでで130名ぐらい。で、あと70名〜80名が地方公立大学(中には広大と難易度で並ぶ大阪府立や大阪市立の合格実績も含むけれど)、という感じじゃないでしょうか。
 さらに、村上の個人的なイメージで言うと、学年上位80番ぐらいの子までは、間違いなく国立志向の強い子たちで、個人的事情は色々あっても合格した国立大学に進学しているけれど、100番以降の生徒さんになると、大都市圏の学校ならいざ知らず、地方の公立大学になると、果たして進学先にすんなりとなっているのかどうか、ちょっと謎の部分がある。
 受けるつもりはさらさらなかったのに、担任の強力なリードがあって受験して受かった、でも、根本的に行く気はないから別の選択をしたって子も多いのじゃないか。いや、憶測で言っているわけではなくて、実際にそういう体験をした教え子がいるから言っているんで、もうそろそろそうした辻褄合わせはやめてもいいんじゃないか、と提案したかったわけです。
 つまり、県教委のための実績作りから、本当に生徒の方を向いた実績作りに転換してもいい頃になってきたんじゃないでしょうか。受験指導のノウハウはもう十分蓄積されたと思うし、そのための組織作りも成熟してきていると思う。優秀な生徒は黙ってても集まるようになっている。公立高校回帰は公立中学で完全に定着しているし、小学生の中高一貫人気といっても以前ほどではない。誠之館に行けば、そこそこの大学には行けるって、みんな思っているし、まじめにやっていれば実際行ける。だから、誠之館が無理して実績をつくる必然性がなくなったのではないか。

 ノルマがなくなった途端に、教職員の受験指導のモチベーションが低下し、実績が急降下するとも思えない。多少、減少しても、不健全に底上げするより、生徒の進学意識、教員の力量を素直に反映する実数が出た方がより健全な進学校になる。
 綜合選抜から単独選抜になり、名門校復活をかけて関係者が恐ろしいほどの重圧に耐えながら実績作りをされてきたことは、福山に来て20年、よく見聞きしているつもり。だから、そろそろ潮時じゃないかなぁ、と思う次第です。

 そうすれば、公立中学校でのんびりやってきた子たちで、誠之館に入れたのはよかったけれど、ついていけずに半年ほどであっという間に落ちこぼれていく子たちが、もう少し救済されるような余裕もうまれるんじゃないか、と考えます。
 峻烈な競争が苦手で、じっくりマイペースで伸びる子たちにも、生活しやすい学校環境が醸成されていけば、結果として、誠之館の実績はもっと伸びるでしょう。

 余談の方が長くなってしまってまとまりの悪い話になりました。長々とここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

 では、また。