6月24日の市立福山中高学校説明会(塾対象)の報告

 進路指導実績に関して、校長先生は「まぁ、例年並で、、、」と切り出されつつ、国公立大学への現役進学者数の卒業者数に対する割合が、尾道北高校や誠之館高校ほど高くないことを指摘された。資料Ⅰ参照。

【資料Ⅰ】

高校名  現役国公立大学合格者数(人) 卒業者数(人) 割合(%)
尾道北      143           199     71.9
誠之館      171           276     62.0
福 山      76           183     41.5

 

 確かに、卒業者数を183名でカウントしたら三校のなかでは最も低い。しかし、中学から入学した一貫生(中入生と呼ぶらしい)だけで考えれば、誠之館を上回る実績をあげている。また、難関大学の合格者数をみても同じようなことが言える。資料Ⅱ、Ⅲ参照。

【資料Ⅱ】

高校名  現役難関国立大学合格者数(人) 卒業者数(人) 割合(%)
尾道北        16          199       8.0
誠之館        14          276       5.1
福 山        13          183       7.1

 

 では、今年で10周年を迎えた福山市立中学・高校の中高一貫教育の進路指導実績が誠之館を抜いた! ということになるのか。

 小学校卒業時点で、水準以上の思考力・判断力・表現力を備えた子たちを集め、6年かけて教えることのできる学校のもつ優位性を考えれば、もっと圧倒的な結果を残してもよいのではないか、と考える方も、ひょっとしたらいらっしゃるかもしれない。

 しかし、集団の受験指導に何らかの形で携わった経験がある方なら、たぶん、違った見方をされるはずだ。小学校卒業時点で、ある水準以上の思考力・判断力・表現力を示せるからと言って、それが国公立大学の合格に直結する能力証明にはならないし、6年間の時間があるからといって、適切な学習指導や進路指導がが伴わなければ、必要な学力を育成することはできない。

 広大附属福山高校や尾道北高校、誠之館高校のように、進学校としての伝統が入学した生徒たちをごく自然に自立した受験生として導く雰囲気(「文化」といってもよい)が色濃く存在しているところとは違って、この十年間でほぼ何もないところから新しく受験指導の仕組みを創り上げ、安定して上記のような結果を出し続けている市立福山高校の努力は敬意をはらわれてよいのではないか。

 思い起こす。中高一貫校としてスタートした時、保護者から「市立ってどうなんですか」と尋ねられ、「内部の受験指導態勢が整っているように見受けられません。しばらく様子を見られた方がいいでしょう」と対応した。今はちがう。

 福山市立中学高校のこの10年間の最大の誤算は、高校からの入学者80名の学力レベルの平均が、内部進学者のそれまで到達しなかったことだろう。堅実な実績がきちんと評価されれば、おのずと成績上位者が市内全域から集まってくるだろう、と村上は考えていたが、そうはならなかった。入学者の地域的な偏りは解消されていないらしい。依然として、広域から優秀な生徒が集まってくる「進学校」ではなくて、通いやすく学費の安い「公立高校」のイメージが抜けきっていない。

 中高一貫校を謳いつつ、高校からも入学者を募る矛盾は例えば広大附属福山高校にもあるけれど、高校からの入学者の学力レベルが低すぎて、内進生と一緒に授業できない、ということは全くない。ところが、市立福山高校の場合は、80名のうち内進生と同等に教えられる子は、その2割ぐらいではないか。1クラス33名規模のクラスが6クラスあり、外進生だけのクラスが2クラスできる現状はここ数年変わっていない。 現役で国公立大学に進学した子たちについて、学校側が公表した資料をみても、上記の推測が裏付けられる。資料Ⅲ参照。

【資料Ⅲ】

          現役国公立大学合格者数(人) 卒業者数(人) 割合(%)
福山 (中入生)       68           103     66.0
福山 (高入生)        8           80     10.0

 

 実力はあるけれど、内申不足で誠之館を受けきれない子たちに、2年前から市立福山高校受験を勧めている。ただし、「いいかい、君が合格することは間違いない。問題は内進生とミックスされるクラスに入れるかどうか。合格者の上位10%にちゃんと入れるどうかが問題なんだ。合格すればよい、というものではないのだよ」

 

 スパッと完全中高一貫にして、中学からの入学者定員を200名に拡充し、高校からの入学者をゼロにすれば、もっと中高一貫校としての理念を体現した、個性のはっきりしたいい学校になるだろうに、と思うけれど、そうはできない事情があるのだろう。お役所のやることはよくわからない。10年前、そもそも公立の中高一貫校ができたこと自体が驚きだった。そしてこの10年、試行錯誤を重ねながら、ここまで勢いよくやってきていることを評価するべきだろう。

 誠之館高校との比較は、出発点となる生徒たちが同じではないから、優劣を論じても不毛であろう。通っている子たちが充実した学校生活を送っているかどうか、いろんな物差しがあるだろうけれど、論じる人によって見方が分かれる話は避けたい。

 「遠い、通学が大変、宿題が多い、レベルが高い、進度がはやい、提出物が多い、部活も生活指導もやたら熱心」と、市立福山を語る言葉はすでに定型化してしまっているけれど、「面倒見がいい、受験指導の態勢が整っている、意識の高い生徒が多い」も忘れずに付け加えておきたい。