松本零士さんのこと

親しかった親戚の叔父さんがなくなった気分。

少年誌(少年サンデー?)で最初にであった、サルマタケで有名な「男おいどん」はそのペーソスあふれる物語を、村上がきちんと鑑賞できるほどの年齢ではなかったので何か暗い話程度の思い出しかない。「キャプテン・ハーロック」や「銀河鉄道999」がもてはやされた頃は、村上が漫画・アニメから遠いところにいた。だから、村上にとって松本零士氏の代表作にはなっていない。

村上が夢中で読んでいたのは、戦争漫画「コックピット」シリーズ。第1巻の「スタンレーの魔女」は、いつまでも心に残る一篇。

名作「紫電改のタカ」を描いた、ちばてつや氏と親交が深かったことを報道から知って、深く納得した。太平洋戦争をきちんと受け止め、漫画という表現媒体を通して正面から描き切ったお二人を同じように尊敬してきたけれど、それは当然のことだったのだ。

丸山正男氏や司馬遼太郎氏が亡くなられたときに強く感じた寂寥感がまた襲ってくる。

これまで、どれほど導かれ諭され励まされてきたことだろう。「いつまでも甘えるな、これからは、ひとりで考えて生きていけ。」と、改めて命じられている。

「はだしのゲン」が広島市の平和教育の資料から削除される、と聞いた。別にかまわない。いい作品は、他にもたくさんある。何を読んで戦争を学ぶか、原爆投下のもたらした惨劇を知るか、別に学校関係者に決めてもらわなくてもよい。どんな時代になっても、歴史的評価の高い作品を、子どもは勝手に見つけ、ちゃんと理解し、賢くなっていく。そして才能豊かな作家は次々と生まれ、名作を生み出してくれる。権威のある人々からどんな扱いを受けようが、普遍的な価値をもつ作品であれば読み継がれ、人々に感動をあたえるだろう。権威のある人々が作為的に道具として利用しやすい作品であっても、駄作であれば消えていくだろう。

「夕凪の街 桜の国」(こうの史代)「夏の花」(原 民喜)「スローターハウス5」(カートヴォネガット)の3冊があれば、いや、どれか一つがあれば、十分だ。

小学生に難しいのであれば、理解できるようになってから紹介すればいい。ものごとは理解できる年齢になってから理解すればよい、と思う。何もわからない年齢で、無理して、子どもの退屈しかねない説明を延々として理解を求めなければならないものがあるとは思えない。

 

松本零士さん、ありがとう。

お世話になりました。

おもしろかったです。

残された作品をまた読み直していきます。

たぶん、新しい発見がまたあるでしょう。

ご冥福をおいのりします。