穏やかな日和とはうらはらに

夜、LECの教室の空気は硬い。硬水があるなら硬空もあるか、と、子どもらの後姿をながめながら思った。いい緊張感を感じた。


昨日、教材会社の方(仮にA氏とB氏)からお話をうかがっていて、ちょっと興味深い話題になった。
すでに周知のように、公立小学校では、再来年から英語が必修化される(週1回)。文部科学省が配布したテキストの目次を眺めていると、純粋に文法事項だけとりあげれば小学5年生のBOOK1で現在の公立中学の中1の領域が、小学6年生のBOOK2で現在の中2の領域がカバーされている。このことを初めて教えられた。そして紹介された塾用テキストのリーフレットを前にして、
村上「これって、その気になってやっちゃうと小5で英検5級、小6で英検4級とれちゃいますね」
MR.A「そうですね、単語も800近くカバーしますから可能でしょう」
村上「すると中1で英検3級、中2で準2級、中3で2級っていう流れを定着できますね」
MR.A「うまくいけば、、、」
村上「しかし、そんなことやっちゃうと塾の中学生の英語のクラス編成が無茶苦茶になりかねない。第一、そんなにタイトな英語の学習をすると中学入試の学習と両立しない。」
MR.A「最近では、英語で受験可能な中学もでてきてますけれど、、、」
村上「ははは。聞いたことはあります、でも実際的じゃない。根本的に小学生には国語の学習が英語よりも優先されると思うんです。日本語の文章すらまともに読めない子がゾロゾロいるのに、なんで英語なんやって思います」
MR.A「おっしゃるとおりですが、では、中学1年生になったら、自動的に『まともな日本語』の担い手になるんでしょうか」
村上「なりません。個人差はたいへん大きいです」
MR.A「にもかかわらず、中学生になると強制的に英語を学習し始めます。これは憂うべきことですけれど、世間一般には受け入れられています」
村上「つまり、英語学習の低年齢化はすでに常識の範囲内にある?」
MR.A「そうです。少なくとも文部科学省はそう考えて動いている」
村上「だったら、その時流に合わせる必要がある?」
MR.A「と思う次第ですが、、、」
村上「ふむ、一定の国語力がある子には試してみてもいいかもしれませんね。確かに並の中学生よりはるかに優れた国語力をもつ小学生はいます。そういう子たちなら、BOOK1からBOOK2まで5,6年で修了できるかもしれない。英語学習が国語学習の妨げになるのではなくて、むしろ推進剤になるかもしれない。言語表現能力をより豊かにするきっかけを与えられるかもしれない」
MR.A「ただ、少数でしょうね。そんなに多くの子ではない。大多数の子どもにとっては、小学英語は英語嫌いを低年齢から大量生産する可能性の方が大きい」
村上「塾屋にとっての問題点はそこですね。どちらに照準をあわせるか。より飛躍する可能性を秘めたごく少数の子たちにむけた小学英語を実践するか。大多数の子たちが英語嫌いにならないように、セフティネットとして機能する仕組みを整えるか。」
MR.A「ご当地の地域性、この塾の規模を考慮すれば、、、」
村上「地域性?、消費者ニーズとか市場マーケティングとか、ダメです。アンケート調査も×です。個人塾に客観的な指標なんかあてはまりません。やりたいか、やりたくないか、僕次第です」
MR.A「おっしゃることはわかります」
村上「検討してみます。これまでずーっと、小学英語は拒否してきました。けれど、この塾用テキストなら使ってもいいかなって思いました」
(以上、少し加筆脚色)
新年度の構想を練るべき時期(これは誇張ではなく本当の話、だいたい12月中に構想ができあがって1月に完成する。下手をして入試本番の激戦に新年度のプランニングが巻き込まれてしまうと、作業が頓挫しにっちもさっちもいかなくなる。だから、この時期に色々、あれこれ、ほどほど過激にトータルに考えておく必要が生じる)に、タイムリーな提案を受けてしまった。
来年度から小学生に英語? ホンマかいな、ホントに教えたいのか、本気で教えるのか、うーん、どうなんだろう。