「機長からアナウンス」内田幹樹 新潮文庫

機長からアナウンス (新潮文庫)

機長からアナウンス (新潮文庫)


 ベテランパイロットの業界裏話を集めたエッセイ集。肩の凝らない読み物で、大きな感動もないかわりに、「パイロット」というエリート臭の強い職業に抱きがちな偏見がポロポロ崩されるツボをつく逸話が、数多くあって、「へぇー」とトリビアっぽい感嘆を発しながら読んだ。

 中には、名国産機YS-11に僕が抱いていたロマンティックな幻想が(それは、おもにNHKの「プロジェクトX」の番組から植えつけられたものだけど)、木っ端微塵に打ち砕かれるような率直な見解もあって、目からウロコ。何でもそうだけど、現場にいる人じゃなきゃわかんない話ってありますよね。

 UFOの目撃談、御巣鷹山に墜落したJALの事故調査についての意見、航空行政の矛盾、安全運行に対する疑問、提言、どれをとりあげても、プロフェッショナリズムに貫かれた視点が説得力のある話を構成しています。

 でも、航空管制官の話とか、客室乗務員とパイロットの関係とか読むと、飛行機に乗るのが、すこし恐くなります。

 仕事で頭が煮詰まりかけたときに、一服の清涼剤として、効果覿面の一冊です。