お昼

 小6の男子児童たちが、昼休憩になると「缶蹴り」に燃える。色々事情があって、本物の「缶」ではなくて、トイレットペーパーの芯とダンボールとガムテープで手作りした「缶もどき」を蹴っている。何度も補強され、修繕され、ほどよい大きさ、納得のいく堅牢性が追求されている。とにかく、昼休憩に全力で駆け回る十数分が彼らには、死活的に重要らしい。午前中は家にいても、昼休憩には必ず塾に来る。元気な男の子が多い学年にはよくあることで、今の中2のときも似たような雰囲気だった。駐車場よりずっと狭かった塾の庭でサッカーやラグビー、教室内ではバレーと、やりたいほうだいやっていた。どの学年の子どもらも、教えられなくても本能的に遊び、夢中になり、大きな楽しみを得ている。いつだって見る者の気分がよくなるほどに。
 もちろん、近所迷惑の可能性は否定できない。しかし、今のところ、子どもらをおおらかに見守るゆとりが機能しているようだ。大目にみてもらっているのだろう、苦情はきていない。できれば、あと三週間、猶予をいただきたいと思う。もうすぐ、彼らの中学受験も終わる。彼らが、塾の昼休みに駐車場を駆け回る日々もピリオドをうつ。一日に八時間ちかく、黙々と問題演習に励む彼らの、お昼のほんの十数分をもう少しの間だけ、我慢してやってください。