いよいよ附属福山中の入試である

 福山市内の中学入試が、明日沸点を迎える。
 定員120名に対して、男子567名、女子507名、計1,074名で、倍率は8.95倍、前年より80人近く減っているけれど、凄い数字であることは間違いない。僅少差で合不合がわかれることは疑う余地がない。
 
 最後の過去問演習のあと、次のような話をした。
 「きょうまで、色々な意味で、お父さん・お母さんにいっぱいお世話になってきた。だから、今日の夜でもいい、明日の朝でもいい、応援してくれたお父さん・お母さんに感謝の言葉を述べなさい。そして、必ず、納得のいく受験をしてくる、と約束しなさい」と。そして、「明日の朝、附属の校庭であおうじゃないか」

 彼らが、教室を出て行くのと入れ替わりに中1の生徒たちが入ってきた、すると、「応援して来ていいか」と許可を求めるので、OKを出すと、ドアをあけて、駐車場で迎えを待っている小6の生徒の名前を呼んで、「がんばってぇ!」と叫ぶ。
 一年前、彼女らが、エクストラ・ハイ・テンションで出撃したのと同じように、今年の彼らも出撃していった。

 子どもらにとって、附属福山中受験は、まず第一に、長く辛く苦しかった中学受験の終わりを意味する。その日をどれほど楽しみにしてきたことか。第二に、ほとんどの児童にとって、第一志望、本命の学校の受験を意味する。それがどれほど大きな重圧になることか。心と体の解放の日であると同時に、冷酷な審判を受けるための試練の日でもある。合格が約束されていれば、言うことなし、に思える。しかし、誰もそんな約束を手に入れることはできないし、「くじ」(2次選抜)がその合格すら、残酷にもてあそぶとなると、すっきりさっぱり受験完了とはなかなかいかない。

 しかし、そんな制度的な制約にもかかわらず、彼ら、彼女らは、勇躍として出撃していった。できれば、明日、大勢の受験生、保護者、塾関係者でごった返す校庭で、彼らの笑顔に接したい。何がどう転んでも、とにかく、中学受験の勉強に特大のピリオドを打つのだから。そして、それはたんなる終わりではなく、彼らが確かに新しい世界へすすむための扉を開ける、第一歩に他ならないのだから。
 「すべては終わり、すべては始まる」(中島みゆき 「無限軌道」)