というのも

 またしても、早朝、ひどい頭痛で目覚め、切迫した嘔吐感に突き動かされて寝室を出た。形容し難い悪寒と、眼球の奥から左脳の深部に突き刺さる激痛でふらふらしながらトイレに入った。しかし、出るものがない。間歇的に胃袋が裏返り、吐瀉物が押し出されてくるのだけれど、透明な水ばかり。「インフルエンザにしては早すぎる、風邪にしてはひどすぎる」、朦朧と原因探しをしながらうずくまっていた。結論は明らかだ、過労と睡眠不足とストレスによる自律神経失調症、病気ではない、身体の意識に対する逆襲。無意識の造反。コントロール能力を失った自意識の暴走。
 のろのろと体を引きずり、熱いシャワーを浴びて悪寒をねじ伏せる。低体温状態を脱したところで、よろよろと浴室を這い出て、「頭痛は忘れたことにする」「とにかく鼓動にあわせてステップする」「娘を学校に送って帰ってくるまでは立ち止まらない、座らない、目をあけておく」と唱えながら、リビングをウロウロ熊のように歩き回った。
 任務を無事遂行し、帰宅したあと、もう一度シャワーを浴びて、寝た。目覚めると、午後1時前。それから1時間半かけて、社会復帰した。今年の造反劇は早かった。例年、1月に来る。10月に経験したのは初めてだ。加齢のためか、はたまた外的条件か、あるいはその両方か。いずれにしても、ちょっとスッキリした。子どもたちを追いつめている反動が、ちゃんと自分にも現れているなら、これは本物だ。ひとまず、乗り切った。たぶん次も乗り切れる。負けるものか、ニャロメ。