小5

 算数で、円周、円の面積を教えた。「円周率」という謎めいた数字を初めて使うわけで、教える側の塾屋はおびえにも似た緊張感をもって教える。どうして約3.14なのか、中学にいくと、なぜπ(パイ)なのか、誰が見つけたのか、いつから使っているのか、などなど、きかれても答えられないことがいっぱいあるにも関わらず、「円周は直径の約3.14倍になっているんだよ」とさらりと進めてしまう。
 公式の使い方になれてしまえば、基本的に平面図形の問題は今までのパターンを踏襲できる。分ける、くっつける、全体から不要部分をひく、のどれかになる。パズルちっくに、謎解きを始めれば、彼らは自律的に問題と格闘する。もちろん、トラップをしかければ、簡単にはまってしまうの避けられない。初心者マークを外すには時間が少々いる。しかし、もっと「円って不思議だなぁ」、という素朴な感動をもとめてもいいようにも思う。
 正六角形はコンパスだけで作図できるんだよ、分度器はいらないんだ、ということを正三角形を作って示してやると、みんな簡単に納得するのだが、感動がない。感動しろ、と強要すると、台本を読むように平板に「わぁー正六角形ってすごいんですねぇ」とNHK教育の番組あたりで、でてくる下手な子役を演じてくれる。笑いながら「やめてくれ、僕が悪かった」とあやまる。あたりまえだ、感動は強制できない。茶化す彼らが正しい。
 感動はもっと別の瞬間にとっておこう、まず、問題を解けるように練習することが先だ。