説明会 前

 10:00開始に間に合うように、家を出て、車のキィをひねると、確かにエンジンは唸るけれど、悲鳴のような音ばかりでエンジンが起動しない。もう一回心をこめてひねるけれど、グオォォォォオォオォ と唸るだけ。意地になってキィをまわすけれど、時間だけがむなしくたつ。ニャロメ、神を冒涜する言葉を吐きつつ、ミニをあきらめ、カローラ・スパシオで出撃。「いつも金光学園の説明会には遅刻するよなぁ」と思いつつ、国道二号をぶっ飛ばす。県民文化センターに10:00ちょうどに到着。おう、ジャスト・イン・タイム!と思ったところ、そう甘くなかった。満車表示。車の列、3台ぐらいいる。そう来たか、とつぶやいてあっさりあきらめ、入り口を通り過ぎ、反時計回りに円を描いて、近場の駐車場に突っ込む。最後のスペースを確保して、やれやれ。足早に会場に入ると、セーフ。まだ始まっていなかった。機器の調整にてまどっていた。

 説明会 抄録
 まず、副校長先生K氏。はじめてお話を聞く。立て板に水のお話。気負わずたんたんと学校全般の紹介。保護者対象なら必要にして十分なお話なんだろうけれど、ここ10年近く、ずっと学校説明会に出席している僕には退屈だった。ただ、手作りにしてはよくできたスライドを感心してみていた。たぶん、総務のO氏の作なんだろうけれど、パワーポイントのパワーユーザーに違いない。
 例えば、岡山中学の学校説明会だと、とにかく学力向上、打倒岡山白陵!めざせ東大、国立医学部医学科!!って雰囲気が濃厚なお話が延々と手をかえ品をかえ続くので、ほんまかいな、ようやるわ、という気分に陥る。一方、金光学園の副校長のお話をうかがっていると、そんなにのんびりした話でいいの?という気分になった。よく言えば牧歌的、悪く言えば放任。
 いや、教務主任のF氏が語った中高一貫のカリキュラムはそれなりに出来上がっていたし、探究クラスのさまざまな取り組みは非常に興味深いものがあって、意外にアカデミックじゃないか、という感想ももった。たぶん、徹底的な生徒性善説の立場にたっていて、生徒の探究心を上手に刺激することで、学問の新しい地平が彼らの心に広がり、心の導くままに、自主的に生徒たちは勉学に励むであろう、という根本的な思想があるのだろう。だから、行事活動もクラブ活動も実に熱心で、全人教育を高らかに謳いあげる理想主義的なのどかさがあるのだろう。
 たぶん、百人にひとりかふたり、金光学園の先生方の期待にこたえる超優秀な生徒は確かにいて、クラブもとことん頑張って、難関国立大学にもばっちり受かって、伝説のヒーローになるのだろう。だけれど、クラブは頑張れても勉強はちょっと苦手といった子や、もう少し頑張ればぎゅーンと伸びるけれど、あとひと伸びするには、のんびり屋さんのおおらかさが災いする、といったタイプの子は、どうなのだろう。のんびり楽しく学校生活をエンジョイするには最適の環境かもしれない。数年前、「金光楽園」と揶揄されていた学年もあった。その雰囲気が払拭されたとは聞かない
 福山から金光学園に進学する子どもたちのレベルは、この十数年で大きく変わった。何も岡山県まで通わなくても、という状況が客観的にできあがった。広大附属福山中学の受験に失敗したけれど、基本的に優秀な子達の受け皿が市内、県内にきちんと出来上がった。だから、今春、広島県からの金光学園中学の受験者が四十数名減少したのは当然の結果であろうし、その流れはもはや止められまい。よほど公立高校の受験指導にアレルギー反応が起きるか、各公立中学が今以上に無茶苦茶荒れるか、なにか緊急避難的選択が必要にならないと、選択肢のひとつにならないのではないか。のびのびした校風に郷愁を感じるのは僕一人ではないだろうけれど、もっときっちりした受験指導システムの導入と確立をはからないと、保護者の抱く不安を解消できないだろう。その点に関して、きょうの話を聞く限り、福山市内の私立高校と比べても、ゆるい姿勢が感じられた。
 

 説明会 後
 ミニをいつもスパシオがお世話になっているトヨタのお店にもっていって、担当のI氏に点検を託した。一時間あまりで問題の所在があきらかになり、改善がはかられた。雨の日は気をつけること、オイル漏れは仕方ないこと、クーラーをつけて高速道路を走ったらまちがいなくオーバーヒートすること、しょせん趣味で乗る車であること、ミニ談義に花が咲いた。変な車だから、愛着もわく。安全であたりまえな車は退屈するだけ。ひねくれた塾屋にはちょうどいい。