88

 「八八」と聞けば、「八八艦隊」を思い出す。「アハト・アハト」といえば、ドイツ軍の88ミリ砲だ。きょうはどちらでもない。場所はヨーカドー、紳士服売り場、スラックスを二本もって試着室に入った。
 「85cmなわけないじゃない、そのお尻みなさいよ。入らないわよ」
 「大丈夫だって、入れてみせる」
 「91cmでもいいくらいよ」
  試着した結果、ウエスト88cmになった。ニャロメ。結婚する前は76㎝だったんだ。
 そもそも今回、急遽スラックスを買い替える必要性が生まれたわけは、ホワイトボードのマーカーが原因だ。三菱のマーカーは乾燥に弱い。ふたを閉め忘れるとすぐかすれる。そこで、かすれたマーカーはふたを閉めて振る。すると、遠心力でインクがほとばしり、再生する。エキサイトしている授業では、時に思いっきり二度三度大きく振る。先日、気合十分で振ったら、ふたを閉めているのに赤い顔料の粒子があたり一帯に飛び散った。予想外の出来事だったが、あとの祭り。右手にもっていたので、スラックスの右脚は、見事に赤い無数の小さなスポットが広がった。二度と落ちない。決して元通りにはならない。お陀仏である。というわけで買い替えとなった。いくつになっても、情けないガキだ。