午後

 「これは僕の仮説なんですけれど、親が子に向かって『お前が大学へいくなら、どんな援助でもしてやる』と言うと、子どもは現実逃避に走ってあまり勉強しない、、、『そんなこと言われたって、、、』と、へそを曲げるのが関の山。『大学なんか行かなくていい、行くな!』と言うと、子どもは不思議と必死になって勉強して『どうしても行かせてくれ』って言う。『それでも親か』とか猛反発してね」
 「子どもは宿命的に天邪鬼である(笑)とか、青年期には親に反発したがる、と単純に考えていただいてもいいのですけれど、たぶん、親の期待に応えなければならない、と考えると、どうしても鬱陶しい気分になってしまうのだと思います。期待通りの結果を出すのは難しいですから。もちろん、期待されてはじめてヤル気を出すタイプの子もいます。自分に自信があって、自己顕示欲の強いタイプの子。でも、高校生にもなると、自我が邪魔して、幼児のように期待されて発奮するという単純な行動はなかなかとりにくくなるものです。親の期待に応えることは、親の支配を受け入れることと相似形でしょ、自立するための自我を確固として確立する時期に、それに反する干渉をされたら、感覚的に反発するのも避けられない。親の好意を頭じゃ分かっていても、心が素直になりきれない」
 「じゃぁ、どうして、『行くな』といわれると、行きたくなるんでしょう。たぶん、既得権を奪われるような気分になるのでしょうね。何かを得るために積極的に努力するのは苦手だけれど、何かを奪われたくないために本能的に反応するのは、人間の防衛本能に根ざした自然な行動であるように思います」
 「『行きたければ行きなさい、行きたくなければ行かなくてもいい』というのも、理解があるようで、実は冷たい言葉になることが多い。『お前のことにはかかわりたくない』と受け止められる可能性が高い。子どもが『ほっといてくれ』『好きにさせてくれ』と言っている場合、『もっと俺の立場になって考えてくれ』と訴えているようなものなので、まず、子どもの思いを静かに時間をかけてじっくり聴いてやることだと思います。話しているうちに、子ども自身が問題点の所在を明らかにして、自己解決の端緒をみつけることは珍しくありません」 
 「すみません、結論はありません。結局、本人自身が落ち着いて考えるきっかけが必要だ、ということしか言えません」