試験真っ最中の生徒の

 追いつめられた気分は理解できる。しかし、「もうダメ」とか「捨てた」とか、否定的な言辞を反復し、予防線を張る消極的な姿勢は受け入れられない。


 「どうしよう先生、数学、何もやってない」
 「学校の数学なら、あわてなきゃ100点とれるよ」
 「地理や歴史も本当に暗記できてるかどうか、不安だし」
 「だったら、明日の朝早起きすれば、まだ3時間くらい勉強できるでしょう」
 「どうして、私がそんなに早くおきなきゃいけないの」
 「不安なんでしょ、だったら起きなきゃ」
 「起きられません。朝はダメ」
 「じゃぁ、寝ないで夜やってしまう、三時間も寝ればOKでしょう」
 「本気ですか、いやだ、もう勉強したくない」
 「不安を取り除くには勉強するしかないでしょう」
 「もういい。どうにかなる」
 「それはおかしい。まだやれることはある。やるべきだ」
 「もうぅぅ、信じらんない、先生、本気で言ってるんですか」
 「あたりまえです。結果が出てから嘆くくらいない、今夜は無理をしなさい」
 「でも、テストのあとで部活もあるんですよ」
 「部活なんかどうでもよろしい。まず、テストをなんとかしなさい」
 「もうぅぅぅ」

 おそらく、不平不満を1分間に3ダースくらい口にしても、
 彼女は今夜がんばるにちがいない。