小6の授業を始めたばかりの頃、自習室に中3の女子生徒、なんとなく呼ばれた気がして顔を出すと、晴れやかな表情で
「受かりました」
「ほうほうほうほう!おめでとう!!」
なかなか自分の気持ちを出しにくいタイプの子が、おずおずとこぼれる笑顔から喜びをにじみ出している。その姿がたいそう可憐であった。手続き締め切りが木曜日、次の発表が金曜日。
「ふむ、僕は手続きの必要はないと思うけれどねぇ」と言うと、一瞬彼女の顔に不安がよぎり、心なしか、顔が曇る。
「大丈夫だって、英語はいつもどおり半分できたんだろう」
「はい、できました」
「じゃぁ、心配ないって。おばあちゃん喜んでくれたでしょう」
「はい、ケーキを買ってくれました」
「そうかぁ。よかったなあ」 しみじみ平和をかみしめた。
そして、また、授業をしていると、トントンとノック。授業を中断させる勇気のある奴はいったい誰だぁ、とムカッときながら、ドアを開けると、中3の野球少年。
「OK、附属の過去問ね、すぐ準備するから待ってろ」
(学校が終わったらすぐに来いって言ったのは、俺だったなぁ)
彼は、それから、4時間あまり、10:00過ぎまで孤独に過去問演習
数Ⅰの授業(内容は数Ⅱ、「アポロニウスの円」を楽しくやった)を終わって、03教室に入ると、
彼が中3にしては老けた顔をくしゃくしゃにして笑っている、「???」
「先生、奇跡をおこした!」
「なに?」というと、
ごそごそと、数学の答案用紙を見せる、
「へぇー、八割解答じゃない、やるなぁ。だから言っただろ、たいしたことないって」
前の晩は、ボロボロの答案を一問一問解説しながら、失敗の原因を、ひたすら問題文リテラシーに局限して、恐れる必要のないこと、容易に解けることをくどいほど言い聞かせた。
いやになるくらい見事な反応。まぁ、塾屋を長くやっていると、たった一回うまくいったからといって、有頂天になるほど甘いものの見方はしないけれど、気分は悪くない。
そして英語の解説。英作文のイロハを基本に戻って講義。分詞の後置修飾が怪しいじゃないの。なんてこった。初歩からドリル演習。気がつけば午後11時20分。何人か残っていた中2の子どもらもいつしか消えていなくなっていた。(3人は宿題忘れの居残り、1人は英検2級対策)
「最後まで、奇跡を信じてやるしかない」と言いつつ、
「3年間、のんべんだらりとやってきたのは、ここで頑張るためだぜ」と言いつつ、
考えてみれば、中学受験のための2年間を入れると、五年間分の負債を一気に解消しようとしているわけで、本当に後がない。
なんとかしなければ。
絶対、なんとかしなければ。
時間さえあればなんとかなる。今のあいつの集中力なら、2週間で飛躍できる。
土台はちゃんと築いてきた。必要な手はうってある。
なりふりかまわずやってやる。
割れて砕けて避けて散るかもしれないけれど、やってやる。
I have not yet begun to fight! だ。
ということで、
LEC突撃宣言!