”護顔工事”・中島みゆき・入塾試験講評

 2007年度は、早めに募集を切り上げ、人数を制限する方向に走っているので、入塾試験の講評もちょっと気合を入れて書いた。書いた僕にしか分からない部分で気持ちをこめた。
 ここ三日連続で、寝るのは午前二時。零時ごろ帰宅して食事しながら家人と雑談、ベッドにもぐったら急降下爆撃機並の垂直降下で爆睡。で、毎朝、午前七時にぱっと目覚めてしまう。懇談・入塾試験・講評と重要行事が目白押し、もちろん受験生も朝早くから来る。オートマチックに目覚める。
 今朝は、洗面所の鏡の前で、デジタルオーディオのイアフォンをはめ、中島みゆきの「永遠の嘘をついてくれ」をエンドレスリピート、まるまる4コーラス聞きながら、”護顔工事”(360度くるくる踊り狂いながら、顔を洗い、髭をそり、髪を整え、口ぱくで歌う!)。家族は寝ているからいいようなものの、もし目撃されていたら、突然発狂してひとりで暴れている、と勘違いされたことは間違いない。
 入塾試験の講評を寝ぼけ眼でしたくなかった。わざわざ入塾試験を受験してくださり、朝早くから講評に来てくださる方々、ひょっとしたら同伴する子どもたちに、ぼーっとした顔をみせたくなかった。心の奥に眠るありったけのエネルギーを振り絞ってもパリッとした顔にしたかった。
  そして、予定通り次々と受験者の保護者、本人を迎えながらお話をした。結果を気にして緊張していた女の子が、「よかったぁ」と破顔一笑するシーンは胸をうった。不安そうに結果を聞きながら、「大丈夫ですよう」のひと声でほっとする男の子の気配も、また、重かった。
 ついこの間まで、僕もひとりの受験生の親として連絡を待ったり、通知書の封筒を開けたり、掲示板の前に立ったりしたばかりだったから、その気持ちの揺れと震えが手に取るように伝わってきた。 いや、まさにそうした経験があったからこそ、入塾試験に気合が入る、入って仕方ない。いままでだって真剣だったけれど、それは塾屋の発想であって、試験される側の気持ちに立つものであったかどうか、そこのところは無自覚であったように思う。
 2006年度、僕が塾屋であり保護者であったというニ面性は、時に途方もなく重荷になったこともあったけれど、今では圧倒的なアドバンテージになっている。誰に教えられるより、自ら体験することの強み、修羅場をくぐりぬけた経験は、僕をいままでにない昂揚した気分に導いている、と思う。
 というわけで、今朝、踊り狂ったのは必然だった(笑)。
 
 3:50 入塾試験の講評は順調に終了した。

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