昼休憩

 先日、庭のパンジーが全滅した。不審に思いつつも、陽気につれられて、2時間の昼休憩を活用して植え替え作業に着手したら、ギョギョギョギョッ。ウニョ、ウニョ、モゾ、モゾ、パンジー一株あたりに、平均7匹のモンシロチョウの幼虫。太いのやら、ちっこいのやら、丸まったのやら、ウジャウジャいる。ギョエーッといささか下品な声をあげながら、次々と捕獲処分。近くの畑にもっていく気にもなれず、感情を押し殺し、枯れたパンジーとともにズコズコビニール袋に突っ込んだ。このところの陽気で一斉に孵化し、ガツガツ葉っぱを食べまくっていたのだろう。青虫もおとなしくしていれば、共生を許されたものを、全滅するまで葉を食べつくし、花をかじるから悲劇が訪れる。因果応報。
 蝶になるまで待ってやったら、僕も立派な環境保護主義者、昆虫愛護主義者かもしれないが、あいにく、ごく常識的なレベルで小市民的生活を楽しんでいるので、「コノヤロー、人の植えたパンジー勝手に食いやがって、殲滅してやる」という扱いを受けた。
 しかし、たぶん、植え替えたパンジーにも、もう次の卵が産み付けられており、あと三週間もこんな天候が続けば、また、青虫殲滅作戦が発動されるだろう。それは容易に推測できる。
 しかし、だからといって予防する気にはなれない。防虫ネットは美観を損ねるし、防虫剤はなんか嫌だし(このあたりが、小市民の小市民たるゆえんで、化学薬品のもつ毒性をなぜか許容できないくせに、いざとなったら直接、虫を殺すことにためらいを感じないという矛盾)、今のところ、成り行きと運にまかせて、昼食後、ぼーっと風に揺れる花をみている。
 本当は積極的に何かをしなければならないのかもしれない。本当に花を守りたいなら、そのための行動を取るべきなのかもしれない。しかし、青虫に食われるなら、それも運命、また、植え替えればいいや、と、つい鷹揚に構えてしまう。花はいつか枯れるもの。永遠に咲いているわけではない。束の間、心和む風景を演出してくれれば、それで十分という気もする。もちろん、あまりに短期間に失われることを許容できるほど心広くないけれど、、、。