平和に一日くれた

 と言っても、生徒たちはそうでもないかもしれない。小5の授業では植木算の3パターンを演習した。問題文からどのパターンを用いればよいか読み取る力が恐ろしく低い子たちが、それでも右往左往しながらヒントを手がかりに進んでいくさまは、見ていて微笑ましい。できれば、テープとのりしろの問題には等差数列の考え方を導入したかったが、今年は見送った。先走る必要はない。まず、「植木算って何かおもしろーい!」という感動が必要だ。
 小4には類義語を十組調べておいで、って宿題を出しておいたけれど、意図通りに2字の熟語を辞典を使って調べてきた子は、10人中3人で、おやおやって印象。具体的な方法をこと細かく言わなくても調べられる子どもと、言わないとできない子、しない子、色々いる。少しずつ主体性を向上させるしかあるまい。
 中3はやっと無理数。この抽象度の高い数の概念を明晰に語ることができたかどうか、次回の答えあわせが楽しみ。子どもが宿題ができないのは、教え方が悪いから、それ以外の何ものでもない。無茶苦茶になっていても怒るまい。覚悟はできている(笑)。
 数ⅡBは、ベクトルの内積。代数処理の手法と図形処理の手法と並列して解説した。
 さて、平均的な小5の児童にとっての植木算、平均的な中3の生徒にとっての無理数、平均的な高2の生徒にとってのベクトルの内積、どの組み合わせが最も教えやすかったか。授業終了後の消耗度から言えば、小5が一番激しかった。例題、類題演習と、一瞬の隙もなくバトルを続けた気分。中3は、因数分解の答えあわせを終わって、軽いのりで、チョロチョロっと説明して、はい、こんなものね、と教えただけ。あっさりしたものだった。ベクトルの内積は、なんかガチャガチャ演習しながら、なんとかイメージを具体化した気分、失敗はしなかったけれど、上手に成功したとも思えない。反応はよくなかった。
 さまざまな想念をグシャグシャにかきまぜながら、今夜も家路につく。プッチーニの歌曲が沈み込みそうな気分を明るく転調させてくれるだろう。もっと上手に教えたい。願うのはそれだけだ。