マシン・トラブルを恐れて

 マイ・ドキュメントをバックアップしようとすると、正体不明のファイルがあって時間がかかって仕様がない。よせばいいのに、せっかちな性格が災いして、意味もなくファイルをコピーしてたくわえているであろうアプリケーションを二つアンイストールした。コントロールパネルから、一ミクロンの憐憫も躊躇もなく消した。結果が何を招くか、まったく考慮しなかった。あとでどれほど恐ろしい目にあうか、知る由もなく。
 小6の授業で、いざ、プリントを刷ろうとすると、獅子奮迅の活躍をみせているプリント・ソフトがどうもおかしい。何度起動し直しても、プリントアウトできない。プレヴューできない。「まじぃ、受験指導が頓挫する、徒手空拳の四面楚歌、絶体絶命、どうすればいいんだぁ」すがる思いで、購入もとの教材会社に電話した。するとサポートセンターから連絡がきた。落ち着き払ったオペレイター氏の指示にしたがって、ごちゃごちゃ試した。やはり僕が削除したアプリケーションが原因らしい。自業自得、頭を抱えた、典型的なマッチポンプ。どうして、いつもしなくてもいいことをやっては、状況を悪化させるのか、今までどれだけ失敗してきたことか、唇をかむけれど、もう遅い。
 冷静かつ沈着なオペレイター氏は、僕の人間性を責めることもせず、淡々と指示。素直に従って、添付されている緊急対策ファイルを開き、復旧作業をすすめた。途中、再起動をかけると、嫌な予感が的中して、パソコン自体がフリーズするという忌まわしいアクシデントもあった。しかし、それは、想定の範囲内のできごとだったので、毎度おなじみの処方箋で乗り切った。
 事件勃発から、苦闘40分、平常状態にたどりつき、ソフトは軽快に、以前よりずっと軽く動作する。思わず、電話口で万歳三唱。オペレイター氏に深く感謝の意を述べた。自動車のバッテリーがあがってお手上げ状態の時に颯爽とあらわれるJAF並の鮮やかな救助活動であった。
 「僕の塾ですか、ひとりでやってます」と、説明していることが多いけれど、ウソだね。「僕の塾ですか、僕とパソコンでやってます。パソコンがぶっ壊れたら、もうたいへんです」と訂正しておこう。
 
 明日はせめてごくふつうに受験指導に専念したい。