昨日の

 近大福山・銀河の合格発表はパーフェクト合格で問題なしだった。誠之館を内申の支えなしで実力突破しなければならない生徒のセイフティネットが整った。「誠之館に失敗したら浪人だぜ。手続きはするな」と冗談半分に脅している。
 たいへん罪作りなことではあるけれども、追い込まれて初めて発揮できる力というものがあって、人為的に操作して意図的に追い込まなければならない生徒も時にはいる。そうした手法がまったく向かない生徒に対しては、精神的暴力以外の何ものでもないアプローチも、時に劇的な効き目のある特効薬になることがある。それは抗がん剤に似て、強烈な副作用を覚悟して投薬し、力ずくで結果を出すことが迫られた場合にのみ使用するべきもので、きわめてデリケートな処方が要求される。効果が劇的であるだけに、一度その効能を目の当たりにすると、つい反復して利用したくなる誘惑に駆られるけれど、封印できるものであれば封印しておいたほうがよい。ハイリスク・ハイリターンは、基本的に愚者の夢であって、賢者の採るべき手法ではない。
 にもかかわらず、人が非合理的な情念を捨てきれず、あえて愚者たることを宣言し、正確に予見される未来に無駄というべき抵抗をしなければ自己完結できない状況に追い込まれてしまうこともまたあって、自虐的趣味と切って捨ててしまえばそれだけの行動に過ぎないけれど、しかし、その営みに一片の人生の真実を垣間見ることもある。人生を50年近く生きてくると、論理だけで割り切れない尻尾をたくさん抱えてしまうということかもしれない。入試の時期、毎年緊迫感に押しつぶされそうになると、情けない塾屋はおろおろとあてもなく煩悶と懊悩をくりかえす。
 さて、しかし、現場に出てしまえば、強気でビシバシ、躊躇なく一直線に問答無用で突っ走る。迷う指揮官に誰がついて来るものか。たとえ鬼神と化して、悪魔に魂を売り渡しても。