今、桜をみています。

娘の暮らすことになった街の桜は、見事な満開で、桜並木の下のベンチも石畳の歩道も、おしゃれなカートに幼児をのせた若い母親たちであふれている。少し年長の子どもたちは、一様に鳩を追い掛けては歓声をあげる。幼き日、娘もよく走っていた。
平日の午後なのに、決して人通りの絶えることのない街中で、娘のショッピングを待ちながら、ぼーっとあたたかい陽射しにまどろむ。
娘はこの街で泣いたり笑ったりしながら学生生活を送るのだろう。この美しく咲き誇る桜並木の通りを来年はどんな思いで歩くのか。
来年も、行き交う人々が、明るくさんざめく桜並木をさっそうと闊歩する彼女であってもらいたい、と思う。
明日から娘の一人暮らしがはじまり、愚かな父親が日々娘に悪影響を及ぼす心配も消える。
春の心はのどけからまし。