小6の算数で

 何の変哲もない面積の問題(3:4:5の長方形が45度回転したときに、ある一辺の動いたあとの面積を求める問題)と、これまた定番の通過算(急行列車が普通列車を追い抜く問題)を小テストで試した。予定では、満点がゾロゾロ出るから、その勢いで、整数の性質を扱う抽象性の高い問題を集めたプリントをやろうと待ち構えていると、大失敗、満点はたったのひとり、0点がゾロゾロ。
 「あちゃー。教えているものの責任ですね。」と反省して、ボードで面積の類題を創ってやらせると、反応の鈍いこと。分数式で約分しながら計算することをさんざん教えてきたつもりだったのに、無駄に筆算に走って間違えたり、対角線の積を活用して問題を解くやり方を忘れていたり、どんどん弱点が暴露されてしまう。「冗談はやめてくれ」と、声が次第に大きく荒くなる。
 通過算は前々から重点課題に入っていたので、覚悟を決めて基本問題からプリントを作り直してやらせてみると、まだ覚悟不足を痛感するひどいありさま。距離の単位はメートルなのに、時速で割って時間を出そうとする。初歩的な単位の統一観念すら忘却して式をたてる、その原始的無神経さについに堪忍袋の緒が切れて「ふざけんなぁ」と怒声、テスト用紙の詰まった段ボール箱を蹴る。教室内が凍りつく。気持ちの弱い子らが精神的に追いつめられる。解答させる順に、次々フリーズしていく。そして遂に堤防は決壊する。「泣くなぁ。人前で涙なんか見せるなぁ。こんな問題で逃げようとするな。立ち向かえ。涙でごまかすなぁ。」あぁぁ。生徒ができないのは、教え方が悪いから、それ以上でもそれ以下でもない。塾屋のマニュアルに、生徒を泣かせる教え方はない。完璧な僕のミス。追いつめられているのは、彼女らではなくて、僕のほう。自分の無能と無思慮こそ責められるべきであった。