「先生、テレパシー送ってね」と、あの子は言った。
「あぁ、送ってやる」と、僕は答えた。
毎年の会話、毎年の儀式。
「はい、合格鉛筆!」と、僕が塾のネーム入り鉛筆を渡す。
「やったぁ!」と、喜ぶ小学生。
「ありがとうごとうございます」と、はにかむ中・高生。
彼らが、今、試験会場でどんな思いでいるのか、
ひとりひとりの顔が、フラッシュバックする。
いつものように貧乏ゆすりをしている子がいるだろう。
わけもなくニコニコしながら待っている子もいるだろう。
ぐっと唇をかんで試験監督をにらみつけている子もいるだろう。
あいつは、ちゃんとトイレに行っただろうか。
風邪気味だったあいつは大丈夫なのか。
みんな、がんばれ。
いつもどおり、ふだんどおりやってくれ。
きっといいことがある。
いつもどおり、ふだんどおりできなくても、
いつかきっといいことがある。
だって、ここまで頑張ってきたのだから。
さっ 僕は塾で授業をしよう。
いつもどおり、ふだんどおり。