盈進学園

 昨年同様、学校内で学校説明会。一時間目は授業公開、二時間目は学校説明会。授業公開では、在籍生を見つけようとぐるぐる校舎内を歩き回った。悲しいことに発見率ゼロ。高3から中1まで全クラスのぞきながら歩いて回ったけれど、7名のうち誰も見つけられなかった。クラス名を聞いていなかったのが敗因。おかげで行ったり来たりして、ちょっとばてたけれど、網羅的に授業をのぞきながら得た印象。若手の女性教諭は、みな声に元気があって活気があった、中堅男性教諭の授業は、おしなべて地味、よく言えば堅牢な授業であった、まぁ、これは中年オヤジの主観だからあてにならない。
 学校説明会、理事長のご挨拶。昨年よりよかった。ただ、口癖なんだろうけれど「やはりィ」「本当にィ」「そしてェ」という反復語句が耳障りだった。ずいぶん損をしていると思う。経済困窮家庭に同窓会奨学生給付制度を設ける取り組みについて語られていたことが印象に残った。地方の私学がこの格差社会で存続するための必要条件かもしれない。経済的に無理をしても、盈進に通わせたい!という魅力があってこその話かもしれないけれど、まず、先立つものがないとね。
 校長先生のお話。例年にもまして低姿勢。東大現役合格者を久しぶりに出したことを、もっと誇らしく語るのかしら、と思っていたらさにあらず。淡々とご挨拶。あいかわらず実務者としての安定感はあるのだけれど、理想の教育を熱く語るタイプではない。大風呂敷を広げて大言壮語するよりずっと信頼感はもてるけれど、もっと理念をご自分の言葉で語られるべきだと思う。盈進の教育をその人となりに体現するようなお話をうかがいたいものだと思った。
 学力向上部部長のお話。おやっと思った。眼鏡のレンズに微妙な色、あごに髭、去年とはずいぶんルックスが違う。まじめな熱血教師から、インテリヤクザっぽい雰囲気にトランスフォーメーション。誠之館や尾道北の教員じゃ、たぶん許されないだろう。それだけ学内の地位が上がったということか、など邪推を楽しませてもらった。相変わらずの熱弁で、「授業が基本」というお話をされていた。異論はない。模擬試験の結果をもとに、順調に学力がアップしているお話を若手の教員がグラフをもとに説明。上位層と下位層に顕著な成績上傾向、ただし、中間層に問題があるという結論。
 システマティックな演習を継続していく過程で生じる一般的な現象であろう、と思った。課題は、中間層のモチベーションのアップ。プリントの量を多くしていけば、できる子はもっとできるようになるし、追試、再試を頻繁に行えば、下位層を引き上げることもできる。しかし、主体的な取り組みが成績アップの要になる中間層の子たちが伸び悩んでいるということは、「授業」そのもののさらなる活性化が必要なんでしょうね。生徒が授業評価をおこなって、教員の授業内容の改善に役立てているそうだけれど、まだ、時間がかかりそう。
 来春入試の話。試験日は1月5日。近大福山とガチンコ勝負。いいことだと思う。そろそろ統一試験日を作って、一発勝負でやればいい。競い合ってこそ、差異化もすすみ、質的向上も図れるというもの。
 特技の点数化が来春入試改変の目玉。まず、中学では、国算各150点理社各100点に、特技点(専願のみ)20点がプラス。英検・漢検4級以上で20点は、ゆるいなぁ、と思った。漢検4級は小5でもとれてしまう。児童会の会長で10点というのも、なんだかなぁ、という気分。ちょっとインフレじゃないかしら。
 それに対して、高校は厳しい。英数国各150点に英検・漢検・数検を各20点満点、プラス内申68点分で、578点満点なんだけれど、検定の20点満点は、準1級以上、2級で15点。準2級で10点だから、小学生との違いが大きすぎる。並の中3ならせいぜい準2級が限界のはず。中3の二学期に英検・漢検2級をとっていたら、間違いなく広大附属福山か、愛光を狙わせる。ということで、あまり意味のある制度だとは思えない。英検・漢検各3級を取得して10点の持ち点を確保してるからといって、何の気休めにもならない、と思う。ただし、専願者のみ得意科目が二倍の点数になる昨年まで施行されていた制度が廃止されたのは、よいこと。受験生に媚びているようだったから。
 クラブ活動の時間もきっちり確保し、大学進学実績も伸ばす、という盈進の目指す学校プランは、分かりやすく凡庸に見えて、実はたいへんな試み。どちらにもウィングを伸ばすことのできる生徒を育てるのは半端なことではない。克己心の強い努力型の生徒を時間をかけて育成する必要がある。際立つ才能や学力がなくても、地道に励むことで、どんどん成長できる教育環境を作り出したい、という思いは十分伝わってくるのだけれど、その困難さを乗り越えるには、システムに加えて、教員ひとりひとりの生徒にかける熱い思いがたっぷりとそのシステムを満たしていなければならないだろう。そんなことを考えながら、盈進坂を下った。