報告遅くなりました。

「ありました!」
Y君から、合格の報告を受けたとき、村上は東大の赤門前にいた。午後一時、明るい春の陽射しがあふれていた。
村上が本郷キャンパスに着いたのは、午前11時ちょうど、時折小雨がちらついていた。
11時半、合格発表の行われるエリアは報道陣を除いて封鎖された。
東大のアメフト部員が三列に横隊を組む待機線の真後ろに並んだ。ユニフォームを身につけた彼らはモビルスーツに似ている。
12時、トラックが合格者番号を貼ったパネルを搬入、文科一類から一枚ずつ荷台から降ろしてはパイプフレームにかけていく。娘は用意してきたオペラグラスを取り出したけれど、距離がありすぎてみえない。
落ち着かない気分で延々と続くアナログな作業を待つ。
12時、ついに準備完了、緊張が極に達する。応援団のトランペットが高らかに鳴り響き、太鼓がビートを刻む。東大の応援歌が吹奏される。
監督官が叫ぶ。「いいか、絶対走るんじゃないぞ!」「ウオス」モビルスーツたちがこたえる。
「ゆっくり歩け!」
「ウオス」
三拍子の掛け声とともに、モビルスーツ軍団が前進。わぁー!という喚声、吹奏楽の演奏、どーっと後ろから迫る人の圧力、興奮のるつぼの中で、文科二類の掲示板をめざす。
あっちからもこっちからも人が押し寄せ、真っすぐ進めない。次のパネルに番号が無ければ万事休す、、、
「あった!」娘の絶叫が聞こえた。
「どこだぁ」叫び返す村上。
「あそこぉ!」
指差す先に確かに娘の受験番号があった。
「やったぁ!!!」
「どこどこぉ?」人の波に流されていた妻が合流する。
「あそこ、上の方!」
「あああぁぁぁ、おめでとう」
泣き崩れる妻、ありがとうを繰り返す娘、夢見たものがそこにあった。胴上げされて宙に舞う娘はあらゆる重圧から解き放たれて、実にいい顔をしていた。
村上は半ば放心状態。ただただ、よかった、よかった、と呟いていた。


以上、1日遅れのご報告となりました。
携帯電話の電池切れで送信直前の草稿を失うというミスを犯したこと、指一本しか使えないハンディが、遅延の原因でした。すみませんでした。
明日は予定どおり授業をします。