scene#1
発表の午後3:30をほんの数分まわったころ、メール着信。
授業の合間にひょいと開くと、「落ちました」。たった5文字にこめられた痛恨の思いがひしひしと伝わってきた。
小4の等差数列の授業を中断してメールの返信を書くこともできず、暗澹たる思いで授業を続行。
くやしさと無念が心に黒く巣食う。
scene#2
その数分後、01教室のドアをノックする音、ふり向くと円形の窓ガラスの中に、晴れ晴れとした表情。後光がさしているかと錯覚するばかりの明るい表情で微笑んでいるのはプリンセスY。
あくまで楚々と「受かりました」
まったく無神経に「よっしゃー、よくやったぁ」
と絶叫、授業は中断したまま、外に出て、お父様、お母様、お兄様にご挨拶。入試直前、家庭学習でみせたすばらしい集中ぶりをお聞きして、さもありなん、と納得。
scene#3
授業を再開して、階差数列の問題に取り組んでいると、電話。おそるおそる出ると、少女M。
「番号ありませんでした」
「ああああああぁぁぁ」
何を返答したのか、さだかではない。かけるべき言葉もおもいつかなかった。
停止した思考を起動し、授業を再開した。ほとんど立っているのが精いっぱいのボディブロー。ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう、と心で毒づいていたことを小4の子らは知らない。
scene#4
小4の授業は淡々と続く。窓の外に目をやると、にこやかな少女Eと母親。またも授業を中断して走り出ると、にこやかに
「受かりました」
「おめでとうございます!」
思わず、握手、握手。
scene#5
中1の英語の授業中にメール着信。
「番号ありませんでした」
慟哭が聞こえてくる、泣けてくる。
授業をつづけるために、最小単位の返事をとりあえずかえした。
明日、話し合おう、と。
なんとか授業を続行。
scene#6
授業終了後、メール。「附属、不合格でした」
お母様の淡々とつづられた文章の向こうににじむ切なさとやるせなさが
胸を打つ。
以上、6名受験。2名合格。4名不合格。