新年度

 新年度の授業が始まった。

 例年通り、新時間割が周知徹底しておらず、曜日を間違えたり時間割を間違えたりする生徒が、第一週目にはちらほら現れる。無理もない、村上自身が自分の作った時間割が完全に頭にはいっているわけではないのだから。

 「そんないい加減なことでいいのか!」頭の真ん中で声がしているのだが、長年つかってきた時間割を根本的に変えたせいか、つい旧時間割の手順を踏襲し、「ちがう、ちがう、そうなじゃない」と準備をし直す。

 「そのうち慣れるだろう」と鷹揚にかまえ、こまめに時間割を眺めつつ「あれをああして、これをこうして、、、」とブツブツつぶやく。「予定通りにすすむ計画なんてあるもんか」と愚痴りつつ。

 新型感染症のせいで、社会全体がねっとり重苦しい空気に満たされてスカッとしない。「マスクなんか大っ嫌い」と思っていても、つけないわけにはいかない。塾屋はしゃべるのが商売だから、マスクが邪魔でしょうがない、息があがってハァハァ肩で息をしながらしゃべる、しゃべる、合間でホワイトボードをバンバンたたき、声を荒げ、時に生徒をにらみつけ、時に生徒と馬鹿笑いし、時に生徒の答えに憤激し、時に生徒の言葉に癒され、やれやれ。年寄りの冷や水とはこのことだ。生き恥をさらしてみっともない。生涯現役と言いつつ、末路は惨めなことになりそうだ、と思うと、なおさらマスクがうらめしい。

 とにもかくにも、新年度の幕があがり、勢いよくスタートを切った(つもり)。まだ旧年度の高校受験生が最後のスパートをかけていて、新旧両年度をまたぐここ数日は何かとせわしい。バックヤードに専従スタッフがいるので仕事が回っている。組織として機能し、システムが安定していると塾長は無茶ができる。

 またきょうも誠之館の自校作成問題リハーサルの作成に追われる。開始5分前に脱稿、印刷、実施とか、毎回心臓に悪い。さっさととりかかろう。