残暑なんざんしょ

昨夜、因島の実家で初七日の法要を終えた妻から、朝、電話があって、きょうは因島に来るには及ばない、という。行事もヘルプもないから、と。胸がチクリと痛む。決してサボったわけではなかったけれど、その場を共有していない後ろめたさは否定しようもない。突然できた日曜の午前中の空白の時間を、無為に過ごすことはどうしようもなくためらわれ、庭に出て草取りを始めた。あっという間に繁殖し、ほっておけばとどまるところを知らない草たちを片端から一掃していく。何も考えたくなかった、でも、何かをしなければならなかった。9月とはいっても、それなりに照りつける日差しを浴びながら、機械的に手を動かし草をとっていった。ダメになったポットを四つ、枯れた花を抜いて隅にしまった。元気な花たちに水をやり、肥料を与えた。もうすることは何もなかった。心地よい疲労感に精神が弛緩するのにまかせて、湯舟に身を沈め、うつらうつらと時間を過ごしたけれど、もう罪悪感はなかった。オートマチックに日常に復帰し、塾にやってきて準備をしていると生徒が現れた。

というわけで、3時から、中3の理・社の学力テストがスタートした。彼らは、5科目の試験のあと、理社の授業もあって、きょうは夜10時まで頑張ることになる。ファイト!

指定校推薦2008物語が、今年も塾の底辺で静かに進行していて、渦中のある少年と、「C大学の指定校推薦がとれればいうことなし、それがだめでも、Oの一般推薦がある。それがだめでも、一般入試でOなら突破できるさ」「はぁ、立ち直れればいいんですけれど」「大丈夫、LECがある!俺がいる!一緒に落ち込んでやる」「そのときはよろしくお願いします」「まかせとけ!」という、なんだかよくわからない励まし。他に、ほぼ第一志望の大学に指定校推薦の校内選抜OKをもらった子も数名いて、例年通りこれから高3のメンバーはひとり減りふたり減りして、そこはかとない寂寥感を漂わせながら、センター試験に向かって突進する。

午後9:30をまわった。もう塾には9名の生徒しか残っていない。高校3年の子が二人、ひとりは制服。「どうしたの、学校?」「自習室が開いているので」とのこと。おそらく学校の自習室を終日利用して、夜は塾にやってきたのだろう。この子のきょうの学習時間は、軽く8時間を越えているだろう。文系で学年首席の成績を維持し続けるには、タフな精神力とその精神力を支えるもっとタフな体力が絶対に必要だ。この華奢な少女のどこにそんなエネルギーがあるのか、敬服に値するガッツを静かにしかし凛として放つ姿に接して、襟を正さない塾屋がいたら塾屋失格だ。エアコンの作動音、虫の音、子どもらの鉛筆を走らせる音、塾が塾らしくなる時間、塾屋が塾屋らしくふるまうことに何の気負いもてらいもなくなる時間、たぶん、今がそうだ。