安部君来訪

LEC卒業生、これまでにもしばしばこのブログに登場した安部くんがLECに遊びに来てくれた。

「先生、大学の専任職員に正規採用されました、ご報告にまいりました」という嬉しいお知らせ。うふふふ。すごいじゃない。やったね。

「いえ、まだ学位がとれていないんで、来年度あたりにはきっちりしときたい、と考えているんですけれど」そうだね、まぁ、焦らずやるさ。

「僕は33歳ですが、先生が僕の年には、もう僕たちを教えていたんですよね」

はい、そうです。福山にきたのは平成3年10月、平成4年1月からLECを開講したから、33歳は開講初年度か、うん、教えていたね。

「中1男子が10人ほど、あの六畳の部屋にひしめきあって、、、、」

なんかすごかったよねぇ、野生児の集まりって感じで、遠慮はないわ、野蛮だわ、下品だわ、って、でも、すこぶるエネルギーはあったな。

「どうなんすかねぇ。とことんやれ!やっているうちにできるようになった自分に気がつくってよく言われましたけれど、ガキの時にはわからなかったですねぇ。大人になって、ああそういうものだなって思いましたけど」

うんうん、そういうもんでしょ。

 

安部くんから学んだことはいくつかある。

ひとつめ 「自分のペースを大切にする」

人には人のペースがあり、本人がそのペースをきちんと認識し、自覚しているときは任せたほうがよい、ということ。ともすると、周囲にあわせようとして無理を重ね、非生産的な努力を不毛に強いられることが日本社会には多い。たぶん、彼のお母様の子育ての方針だったのではないか、と推測するけれど、おおらかに彼のペースを受け入れ、あたたかく励ましておられた。また、彼もその信頼によくこたえた。適切な親子の距離と太い信頼関係を互いに維持していた。なかなか難しいことだったと思う。

ふたつめ 「ブレない芯の強さをもつ」

何かを選択することが何かをあきらめることになるのは、現実的な局面でよくおこる。中学・高校・大学を通じて、首尾一貫した選択を続けられるこ子は少ない。状況に応じて成長と挫折をくりかえし、次第に確固とした自分を築き上げ、迷いつつ怯えつつひとつの選択にたどりつくのが大多数の例だろう。ところが、彼は違うように思う。サッカーに対する情熱とこだわりは首尾一貫しており、プレーヤーから指導者への変転はあったけれど、常にサッカーを念頭において選択し続けてきた。誰がなんと言おうと、誠之館ではなくサッカーをするために葦陽高校を選び、たとえ二浪しても国立大学でサッカーをするために学芸大学を選び、さらにサッカーの本場英国を留学先に選んだ。留学中は、慣れない英語と膨大な課題で、極少の睡眠時間だったにもかかわらず、プレミアリーグのサッカー観戦は続けたらしい、と彼の友人から聞いた。

ブレないすっきりした生き方だと思う。ブレない芯の強さをもって初めて磨かれる人柄・知性・経験があってこそ、競争率数十倍の大学専任講師の枠も獲得できたのではないか。

みっつめ「自分を信じること」

追い詰められ苦境にたたされたとき、自分の一番いいものを発揮して乗り越えていくには、どこかで自分自身に対する自信がなければならないように思う。大学受験のとき、決して楽観的なデータはなかった。「まぁ、何とかします」というのが彼の口癖だったように思う。見事に自己記録更新のスコアでなんとかした。語学力が心配された英国留学も「なんとかなる、って思っていったんですよ。いやぁ、ホントに大変でした。まぁあのときの苦労を思えば、たいがいのことは何とかなるかなって思います」渡英前、周囲の方々にはずいぶん心配されたようだけれど、無事にやり抜いて帰国したことを思うと、やはり、土壇場で自分に対する自信(プライドといってもよいかもしれない)が支えになったように思う。

 

何年かに一度、彼のことをこうして報告できるのは楽しい。

福山生まれの福山育ちの子がLECからどんどん成長している様子をリアルタイムで感じられる。塾屋冥利につきるとはこのことだろう。

彼や、彼と同じように頑張っている卒業生に恥じないように、さて、きょうもがむばらねば。