英単語の話

 オクスフォード大学出版局の調査によると、日常生活で最も頻繁に使われている単語は、 time person year way day の順だそうです(6/24 中国新聞)。
 時間関連の語が目立つのは、現代人が時間に追われているためだっていう解説があったけれど、この単語だけ見て、そこまで飛躍するのは牽強付会にすぎるんじゃないの。調査対象が、広告宣伝、ニュース、と偏った情報発信媒体だったからじゃないですかね。統計分析の手法そのものの詳細がわからんとね、こういう話は鵜呑みにできない。そもそも僕はアンケート調査など、統計分析をあまり好まない。
 大学で教えを乞うた統計学の泰斗は、日本の現代政治を鋭く分析する立派な統計調査を行っていた方だったけれど、間近でお話を聴いていると、非常にクール、いやもう虚無的といってよいほど、統計調査を厳しくお考えだった。この世の中に氾濫する統計調査は、ほとんどがデタラメで、はじめから自分たちの欲しい結論を手に入れるために、行われているようなものだ、と、先生はおっしゃった。
 僕のすごく気に入っていたR・イングルハートの「静かなる革命」を持ち出しても、「日本にはあてはまらんよ。イングルハートに僕らの統計調査を見せたら、彼、両手をあげていたよ」と、にこやかに談笑しつつ一蹴された。まさに1979年以降の日本の政治状況は「非静かなる革命」であった。価値観の転換(例えば、物質の豊かさよりも心の豊かさを求める生き方の選択)は、ちっとも進行せず、あいもかわらず大量生産・大量消費の悪循環から抜け出せないでいる。やれやれ、あれはもう四半世紀以上前のことか、へこむなぁ。
 だから世相に関して、いかにも科学的な統計上の数字よりも、尊敬する詩人や文学者の鋭いひとことを信じる。商品開発について、コンピュータが弾き出す市場調査よりも開発現場の人間の勘を信じる。ああ、文系人間の悪しき人間中心主義かしら。