めぐりめぐってのお話

 「ひらめき脳」(茂木健一郎)を読んでいて、Aha!体験のできる絵(三枚目のやつ)に、この一週間苦しめられてきた。見えそうで見えない「脳のちりちりする感じ」にさいなまされ続けた。とりわけここ数日は、先に「見えた」家人が、「教えてあげましょうか」と煽ってくるのをプロテクトするのが精一杯で真剣勝負を始められないでいた。が、しかし、日曜日深夜、起きているのは僕一人、覚悟を決めて正面対峙、午前零時50分頃から眺め始め、ついに「閃いた」。午前1時20分。見えたのですよ、やっと、あれが。やれやれ。一度見えてしまうと、「一発理解」で、次からは何てことない。あぁ、どうして、こんなに認識力が低いのか、頭が固いのか、自己嫌悪。
 本全体を通して「閃く」仕組みをわかりやすく解説してくれていて、体験的に覚えのある事柄が理路整然と説明されていく爽快感を味わった。創造性の成り立ちにせよ、科学的な発見にせよ、「無からは何も生まれない」。地道な知識の蓄積と、そして、「準備したものだけにやってくる」その瞬間を捕まえる意欲について、やわらかい語り口とやさしい言い回しで説明してくれる。読みながら、そういえば、「逆風満帆」「革命者たち」で取り上げられた人々は、みな、この「ひらめき脳」の持ち主たちなんじゃないか、と思ったところで、ぐるぐるとめぐる数多くのエピソードがジグソーパズルのようにピタッとはまった。
 成功する人々が困難をチャレンジの場と考え、積極果敢に乗り越えていくさまは、全てこの「ひらめき脳」で解析されている、と言ってよい。情動的な観念すら「ひらめく」起因になる脳の不思議を堪能できる本だった。
ひらめき脳 (新潮新書) 逆風満帆 逆風を生きぬく革命者たち