朝、ぼんやりと夜中に何かうなされたような記憶はあった。家人が言った。
「あなた、また、寝言を言ってたわよ。ずいぶんはっきりと」
ぎくっと緊張が走る。前回は、生徒の名前を口にした。あらぬ疑惑を払拭するのに苦労した。
「聞きたい、なんて言ったか?」
「アイアイ、マァーム」
「『俺が合格させてやる!』って実に明瞭に言ってたわ。まったく職業病ね。」
おぼろげながら、夢のストーリーが蘇る。追いつめられた局面を打開しなければならない瞬間に、啖呵をきった覚えがある。はぁ、しかし、夢の中まで僕はいったい何をやってんだか。
職業病というよりは、受験中毒、いや、自己破滅願望というべきなんじゃないか。