小5の算数は

 植木算の復習から入った。基本パターンと分配算が融合して、ちょっとばっかり思考力がいる問題。結果として非常によろしくない。つきつめて考えようとする姿勢をもっと厳しく要求しなきゃなぁ、さぁてどうするべ、と思いつつ、次の問題へすすむ。方陣算も、中空方陣の外縁個数を応用した問題なんだけれど、どの子も解説のボードを見ている姿に覇気がない。虚空に視線がさまようありさま、地を這っている。「しゃぁねぇなぁ」と口にはださずに「じゃぁ、練習問題だ、やってみろ!解けたやつには、ラーメン○統領の割引券をやる!!」
 露骨な利益誘導、悪魔に魂を売り渡した気分だったけれど、子どもらのテンションは急上昇。たまたま財布の中に埋もれていた、決して使われることはないであろうペラペラの紙切れに、彼らが突然収集欲を出したわけではない、ラーメンが食べたいわけでもない、50円という割引額に価値を認めたわけでもない、ただ重苦しい算数の授業が、一転、ゲーム感覚のお楽しみ会に変じただけのこと。鬼のような塾屋の村上が、実はただのオヤジに過ぎず、理由はわからないけれど、何か自分たちを楽しませてくれようとしているらしい、という、ぬるい気分に浸れただけのこと。
 使用価値は限りなくゼロに近い(食べにいかなければ事実上たんなる紙切れだ)けれど、交換価値(それは、LEC内において、僕から一定の評価を得た客観的証明書として通用する)はそれなりに高い「割引券」の争奪戦は、結局、算数の実力者K君の制するところとなった。

 いつも使える手ではない。そう半年に一度程度、連休明け、ぼーっとした頭で久しぶりに算数を学ぶときに、ちょっと試すようなイベント。しかし、それが何年もたつと、子どもらの心の奥深くに、なぜか途方もなく楽しいエピソードになっていることを聞かされ、こちらが面食らうことがよくあるような出来事。
 怒鳴ってばかりもいられない、ふざけてばかりもいられない、適当に句読点をうちながら、小5の彼らの受験勉強はすすんでいく。

 小6は、きょうは特別演習で、K社の模擬試験。リハーサルテキストなしの一発勝負。結果は明日精査する予定。さて、ニコニコするか、怒髪天をつくか、だいたい予想はつくけれど、中身が問題だよなぁ。