大門高校

 事情があって、定刻ぎりぎりに飛び込んだ。やれやれ間に合ったと思って座ったとたん、開会を告げられて「一同、起立、礼」。のっけからカウンターパンチを食らった。正面に日章旗がなかったからよかったけれど、気分は卒業式。学校説明会で「起立、礼」は初めて。思わず苦笑した。ただ、号令をかけた教頭先生の歯切れの良さと、人を素直に従わせる説得力のある声色に反感を覚えることはなかった。
 校長先生は、柔和でいながら、論理的にぶれることのないスマートな話しぶりが、秀逸なマネジメント能力をうかがわせた。メリハリのきいたお話は、嫌味も虚勢もなかった。「県内NO.1の学力を伸ばす学校にしたい」という言葉に多少のためらいはあったみたい(笑)だけれど、内に秘めた野心は意外と大きい、と思った。
 学校の紹介は、資料の説明、ベネッセが大門高校の進路指導スタッフに、スタディサポートのデータの活用方法と有用性をインタビューしたビデオクリップと、RCCが取材、放映した理数コースのサイエンス・ショーのTV番組の一部を混ぜて、教頭が手際よくすすめた。大学進学の指導態勢がほぼ完璧にできあがっていること、理数コースという他の学校にはない、科学教育を重視した特色のあるコースをもっていることが、大門高校のアドバンテージとして効果的に印象付けられた。説明会の企画力は見事。昨年出席した市立福山高校の説明会を遥かに凌駕するできのよさであった。
 選抜Ⅱの検定試験:調査書の比率が1:1になるケースと9:1になるケースをどう決めていくのか、具体的手順を質問したけれど、明快な説明で納得した。細かい数字はさすがに伏せられたけれど大枠の水準を把握できたことは大きな収穫だった。
 堅固と言ってよい大学受験指導システムが出来上がっている割には、現役で国公立大学に合格できる生徒は320名中、80数名だから、三割弱。どうもなぁ、十全にシステムが機能しているとは言い難い。専門学校等に進む子が60数名、学年全体の二割の子が大学進学をしない、できない雰囲気が、大きく影響しているように思う。もちろん大学だけが高校生の進路ではないから、多様な選択肢があってよいのだけれど、生徒相互が切磋琢磨し、互いに相乗効果で伸びていく、あるいは、身近な先輩が後輩のロールモデルになって、ごく自然と啓発されモチベーションを高める、という進学校特有の非システム的機能が、この学校には未発達なのだろう、と思う。
 よく言えば牧歌的で素朴、しかし、裏返せば、目的意識が希薄で合目的的な執着心に欠けている子が多いのだろう。そこをどう目覚めさせるか、ひとりひとりの子の心にどう火をつけていくか、難しい問題だと思う。学校と塾が連携して、と校長は仰っていたけれど、たぶん、そのへんなんだよね。