そこそこの情報発信

「暁の星女子」の学校説明会が先日7日の月曜日にあった。HOT NEWSの鮮度はないが、いくつか述べておきたいことがある。

その1
 2007年の10月10日のこのブログに、「暁の星」の学校説明会に参加した感想を書いた。要点はひとつ。「暁の星」には新しい学校像が必要である、というものだった。
 そして、2009年9月7日、「暁の星」が初めて平日の午前中に開いた塾対象の学校説明会で、校長先生がお話された要点は、「創立理念である women for others(少なくともこのフレーズを綺麗な発音で6回は繰り返した)の育成という学校の根本方針をいっそう堅持する」というものだった。
 聴いた瞬間、「原理主義」「伝統回帰」という言葉が浮かんだ。
一般論として、ある組織が現状打破を目指すとき、二つのおおきな選択肢がある、と思う。
 ひとつは、組織の創立理念にもどって原理原則にあらためて忠実に行動する方法、もうひとつは、新しい理念を掲げ、既成概念にとらわれずダイナミックな変化を恐れず実行する方法。
 例えば、前者の事例として思い起こすのは、江戸幕府、八代将軍徳川吉宗。家康を理想とし、「なにごとも権現さまのいうとおり」と言いつつ強力なリーダーシップを発揮して、享保の改革を成功させ、幕府中興の祖となった。
 ただ、思うに彼が実際にとった施策は、幕府の慣例を大きく逸脱する、現実即応型の柔軟処理が特徴だった。理念的には復古主義者であったけれど、執行者としては、優れて合理的な現実主義者であったと言ってよい。たんなる保守反動にすぎなかった松平定信や水野忠邦とそこが違う。だから、先の衆議院選挙で惨敗した元政権与党の重鎮の方々が、「真の保守」に回帰するべきだとおっしゃられているのを耳にすると、危ういものを感じる。たんなる保守反動にしか聞こえないから。
 現状打破のふたつめのパターンは、新しい理念を掲げ、創造的破壊と同時進行で、理念の具象化を目に見える形で次々と実行していく。新しく政権をとった政党が、「友愛」を掲げ、この国の政治の見直そうとしている姿を考えればよい。と言っても、この党は幹事長である方がおそらく実権にぎっているのであって、その方の辞書には「友愛」はないであろうから、成功事例になる可能性は極めて低い。
 例えば、本田宗一郎氏の「マン島T.T.レース出場宣言」とその後の苦闘の末のHondaの隆盛が格好のモデルケースにみえる。経営困難に陥った会社の活路をレースに見出し、陣頭指揮のもと研鑽を重ね、世界を驚かせる完全制覇を達成し、世界的企業へと飛躍した、という映画のようなストーリーは圧巻だ。およそ、本田宗一郎氏の考えの中に「伝統」だの「原理主義」だのといった言葉はなかったように思う。まぁ、カソリックが「普遍」を求めなければ、カソリックではないわけで、私企業と、宗教法人のミッションスクールを並べて論じるには無理がある。
 
 いずれにせよ、トップリーダーの行動力・統率力が問われるのが組織改革の常であって、性急に結果をもとめることなく中長期的な視点で推移を見守ることが外野の務めであろう、と思う。
 
 その2
 ある教材会社の営業マン(仮にA氏、実直・温厚・紳士的)とコーヒーを飲みながら雑談をしていたときの話。
A氏「女子高の先生方って、時に大学合格実績を共学校と比較されるとき、共学校の実績を半分にしてから比較されたりしますよね」
村上「ぷっ。女子は半分って発想だよね。うちも男子がいれば倍はいくってわけだ」
A氏「あれってどうなんでしょうね」
村上「世間一般の常識からは乖離していると思うし、実際にこのあたりの共学校の合格実績に占める男女の比率は、5対5じゃないんじゃない。直感的だけど、女子の方が多いと思う。まぁ理系は男子に偏っているはずだけれど、、、」

 という話は後日譚で、「暁の星」の学校説明会で出た話ではない。進路指導担当のF先生が、きょうのお土産にとっておきの話(苦笑)ということでご披露してくださったのが以下。
「公立の中高一貫校の高3(一期生)と、暁の星の生徒たち(高3)を、ベネッセの模擬試験でデータ比較した場合、うちの生徒たちの方が伸びている。男子と競合している女子よりも、女子同士の方が成績の伸び率は良い。だから、公立の一貫校より暁の星を選択するよう働きかけてもらいたい」
 「へぇー、はっきり言うなぁ、煽るなぁ」と思ったけれど、一次資料を見ていないので、「ふうむ、まぁ、そうかなぁ」という程度に受け取った。塾にいる生徒を比較しても、それは個人差にすぎず集団の特徴を現しているわけではないから断定的なことは言えない。いずれ結果として出てくる数字で判断するしかない。
 そして暁の星の学校説明会の翌日に「公立の中高一貫校」から塾対象の学校説明会の案内が届いたのは妙なめぐり合わせだった。

 さて、「じゃぁ、君は生徒が進路に迷っているとしたらどうアドバイスするんだ。絶対安全な場所から、好きなことをいっていられる評論家に塾屋はなれないぜ」とご下問があったら、どうしよう。

 塾屋としては、中学受験時なら、 中高一貫校>暁の星  である。
 高校受験時なら、        中高一貫校≦暁の星 である。
 評価が高校で逆転するのは、中高一貫校の内進生と外進生の学力格差が大きすぎるという点で、またキャリア教育の充実度という点で、中高一貫校よりも暁の星の方に一日の長があることは間違いないからだ。
 公立の進学校にありがちな、数量目標を形式的に達成しようとする官僚主義的指導の匂いが、暁の星には希薄なのもいい。
 では、なぜ中学時代は、中高一貫校が勝るのか。はっきり言ってマン・パワーの差、と言ってよいように思う。例外がないわけではないけれど、中高一貫校の先生方の指導力の方が高いように思われる。少なくとも、整然とした授業が規律正しく行われるという基本中の基本において、残念ながら、暁の星は近年評価を落としている。
 
 以上、村上の個人的意見です。事実誤認、認識不足等ありましたらご指摘ください。