ギュンター・グラスのこと

 について、書きたいのだけれど、うまくまとまらない。ポーランド出身、ドイツ在住の「ブリキの太鼓」の作者で、ノーベル文学賞の受賞者。急進的(理想主義的)な平和主義者。日本で言えば、大江健三郎のような人っていうイメージ。そうそう、その昔、「ブリキの太鼓」が映画化されたとき、僕には十分にグロテスクで、十分に想像力豊かに思われた映像が、大江健三郎氏によると、原作にはなはだしく劣ると酷評されていた。なんだか感動した僕まで、想像力の貧困な奴だと言われたみたいで、ひどくしょげたことを思い出した。
 そのグラス氏が自伝の中で、第二次世界大戦中、ナチスの武装親衛隊に所属していたことを告白して、あれこれ論議を巻き起こしている。ノーベル文学賞を自主的に返上せよ、と言われたり、名誉市民を取り消す、とか、社会的に抹殺されそうな勢いで、批判されている。
 確かに、さんざんナチスの蛮行を批判してきた人物が、かつて自分が武装親衛隊にいたことを黙っていたのは、二枚舌の自己欺瞞かもしれない。でも、だからといって、彼の作品の価値が損なわれたり、発言の普遍的価値が貶められることにはならないんじゃないか。教条主義的に、純粋性を求める考え方の方に政治的党派性のいやらしさを感じてしまうの僕だけなんだろうか。
 かつて、天皇陛下万歳を叫んだ皇国少年たちだって、みんなアメリカン・デモクラシーの使徒になったのではないか。ハイル・ヒトラーを唱えなかったドイツ国民がどれだけいるのかしらん。武装親衛隊に所属していたことが、悪魔に魂を売った絶対的過去になるとは思えない、、、
 この項、やっぱりまとまらない、すみません。