しみじみと読みました、「ブラッカムの爆撃機」

 宮崎駿氏が、物語の前とうしろに漫画をくっつけた変則的なスタイルの本。正直言って、漫画は蛇足。名作「雑想ノート」があるんだから、こんなサービスしなくたってよかったのに。百歩譲って、第二次世界大戦中の爆撃機についての予備知識がまったくない人には、必要な導入であったかもしれない。でも、ウェリントン爆撃機ってなぁに、という子どもに読ませても無駄、たぶん、理解できない。ストーリー展開だけチャカチャカ追って、読んだ気になって、ぺらぺら薄っぺらな感想(恐い、キモイ)で終わりにするのがオチ。そんな奴は読むなぁ!とは言わないけれど、無理なものは無理。たとえば、渡辺洋二氏の労作「夜間戦闘機」を読んでいれば、決定的瞬間の緊迫感がリアルに想像できるだろう。あるいは、レイ・デントンの「グッバイ・ミッキーマウス」で感動を味わっていれば、イギリスからドイツまで爆撃にいく話が少しはイメージできるかもしれない。宮崎氏は唾棄すべき作品として、お怒りになられるかもしれないけれど、何も知らない子にはグレゴリー・ペックが主演した「頭上の敵機」や、スピルバーグが監督した「メンフィス・ベル」が参考になるかもしれない。ひょっとしてフレデリック・フォーサイスの「翼を愛した男たち」を読んでいれば、英国人にとって、航空機とファンタジィは実に密接な関係があることを理解できるだろう。
 爆弾は、落とすほうも落とされるほうも悲劇なのだ、という単純な事実をあらためて思い知らされた。もし、読むなら、夜はやめたほうが良い。眠られなくなるから。
ブラッカムの爆撃機―チャス・マッギルの幽霊/ぼくを作ったもの 夜間戦闘機―ドイツの暗闇のハンティング (光人社NF文庫) フレデリック・フォーサイス 翼を愛した男たち
頭上の敵機 [DVD] メンフィス・ベル [DVD]