授業終了後、明日の作戦を

 ボール・キッドと打ち合わせていた。社会のプリント集(134ページの本になった)と理科のプリント集、附属の過去問をどう片づけていくか、タメ息と叱咤激励、追いつめられた悲哀は、すでに少年の肩に寂寥感すら生み出していた。
 そこへ、突然、彗星のようにあらわれたのが、S氏。東中(野球部)→金光学園(野球部)→同志社(法)→C銀行入社一年目のフレッシュマンがまだネクタイもつけたままの準戦闘状態で登場。
 手にしていたのは、なんと京都、北野天満宮の合格祈願のお札。神のお使いにみえた、後光がさしていた。
 S氏に紹介したあと、B・キッドに、
「いただきなさい、これは神様が君のためにS先輩を遣わしてくれたに違いない。元野球少年だった先輩が現れたのも何かの縁だよ」などなど、僕も何か熱くなってしまってしどろもどろ。
 B・キッドは感激に頬を紅潮させながら、それでもスポーツ少年らしく、さっぱり、礼儀正しく、お札を受け取った。少年が勇気百万倍になったのは言うまでもない。さらに、初対面のS先輩からいただいた、
「大丈夫、そこまで頑張ってるなら受かるよ!」のひとことがどれほど彼の心にエネルギーを注いだか。
 さまざまな縁が、さまざまに結び合い、かつてLECで学んでいた元野球少年が、目の前でボール・キッドを励ましている場面は、まるで映画のワン・シーンをみているような出来すぎた一幕だった。なんと劇的な!僕はもう言葉を失い、涙がでてきた。
「どうしよう。やべぇ。」と、感動をまともに表現することもできず、「今夜はねれない!」と言いつつ、足取り軽くB・キッドは帰宅していった。昨夜の、あの疲れ果て、うちしおれたうしろ姿となんたる違い(笑)
 
 S君、本当に感謝します。
 今夜、君が来てくれたおかげで、ひとりの少年の、LECで学んだ意味、LECで頑張った思い出が、実に彩り鮮やかに染めあげられました。
 多感な少年期に、心温かくのこっていくであろう出会いを授けてくれたことで、彼のこれからの人生がよりいっそう豊かになるのはまちがいないでしょう。君はなんて素敵なことをしてくれたのでしょう。心からあらためてお礼申し上げます。
 
 塾屋の無力と無能は、こうして教え子によって救われていく。
 LEC伝説にまた新たな章が加わった喜びをもって、きょうのブログをクローズしたい。