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 子どもの個性を的確に把握し、ほどよい距離を保ち、おおらかに見守る姿勢に感銘を受ける。かつて僕の母親が僕に対してそうであってくれたら、僕はどれだけ呼吸が楽だったろう、と静かに思い返した。まぁ、僕たち親子には、あれ以外の関係はなかっただろうし、それはそれでよい。息苦しかったことも過ぎてしまえば思い出にすぎない。遠い昔のことだ。
 さて、目の前にある受験をどうするか。悩むまでもない、目標までは高速道路が一直線につながっている。燃料切れを起こさないように、スピード違反でつかまらないように、ぶっ飛ばすだけだ。
 とは言っても、ナビは必要だ。時としてセンターラインを捻じ曲げたり、勝手に逆走したり、少年は整備された機械、お行儀のよい模範ドライバーではない。目を離した隙にろくでもないことを嬉々としてやってのける。であるからこそ、退屈しない楽しさを味わわせてくれるのだけれど。たいして長い期間ではない。残された時間は短い。とんでもないことが、たとえ起きたとしても一瞬で終わってしまうだろう。ならば、何も恐れることはない。チャレンジあるのみ。アクセルは踏み込むためにある。