昨夜帰宅して

 娘のチョコ作りの主戦場と化したキッチンを眺めながら、いろいろ考えた。娘に言わせれば、購入した商品はよくできたキットなので、誰でも簡単に手作りできて、失敗できないようになっている、ということだった。「誰でも簡単に」というところが、いかにも高度資本主義的で、「手作り」チョコレートの「生産」過程そのものが商品化されて「大量消費」されていることが、なにやらすばらしくアイロニーを含んでるように思ったけれど、そうした馬鹿話をする場ではなかったので黙っていた。おとなしく試作品を試食させてもらった。上手にできていた。娘が念を押して語った。失敗することが難しいのだ、と。
 なるほど、あらかじめ、失敗することも許されないのか、と、またまた、とんでもない方向に話が飛びそうになったけれど、「ふうん」とおとなしく頷いた。深夜、キッチンを片付けている娘を見ながら、2・14のチョコ作りをめぐる日本社会のあり方を考えているうちに、またまたソファで沈没。目覚めると明け方であった。