広大附属福山高校 合格発表

2名合格 2名不合格 でした。

 O君おめでとう。
 「数学がうまくいかなかったので、意気消沈して帰ってきました」と入試当日に君は報告に来た。「大丈夫!他の科目でカバーできているだろう」と、応対した。半ば気休めに過ぎない発言だったけれど、半ば本気でもあった。というのも、淡々と社会や理科の失敗した問題を詳細に語った君に、『これだけ、冷静に失敗した問題を語れるなら、いいんじゃないの』と僕は思った。受験直後に、自分の犯したミスをクールに分析できる受験生は少ないし、合格者に共通の特徴といってもよいものだったから。
近大福山は、特待(授業料二分の一免除)合格。岡山白陵も「今年は数学が難しかったです」と言いつつ、難なく合格。附属の過去問演習データでもコンスタントに合格圏内にいた。あらゆる面から、よほどのことがない限り、君の失敗はありえないことであった。
1年間ほどの指導の中で、英語が急成長した印象が強い。英検準2級をクリアしたのは一学期だったような記憶がある、いや、二学期だったかしら。どっちでもいいか、まぁ、よく伸びた。年明けからはじめた英作文対策も短期間に効果をあげた。すばらしい集中力だった。だから、直前まで、毎週木曜日の空手の練習もあたりまえのように受け入れた。それぐらい余裕があった。いや、君は「余裕」なんて一度も思ったことはなかっただろうけれど。「今からでも間に合うでしょうか」とお母様が入塾時におっしゃった。「間に合います。大丈夫です」と僕は断言した。約束をまもることができたのは、君がひたむきに頑張ってくれたからだ。感謝したい。

 T君おめでとう。 
 僕たちは3年前に中学入試に失敗した。本番で君はあがって頭が真っ白になったという。実力にふさわしい自信とその自信によって支えられるタフな精神力を君にさずけてやることが3年前の僕にはできなかった。君は、潔く公立中学に進学し、3年計画でリベンジに取り組んだ。中1・中2と水泳(スイミングスクールの選手コース)と両立させながら、君は飛級したひとつ上の学年のクラスで学力を磨いた。順調に実力を蓄えた。中2で英検準2級もクリアした。中3の12月にはもうすることがなくなった。しかし、君は決して奢ることなく、いつも恐いくらい素直に僕の指導に従ってくれた。近大福山は、特待(授業料二分の一免除)合格だった。岡山白陵でも「国語が難しかったです」と、唯一の弱点科目に不安を抱かせるような発言をしつつも、悠然と速達が届くの待つ余裕があった。もちろん合格だった。
そして、広大附属福山高校。朝、テント前で、僕は他の三人とは言葉を交わした。しかし、学校の友人たちと一緒にいる君には、遠くからOKシグナルだけ送った。君がはにかみながら同じように親指をたてたシグナルをかえす仕草を見て、「ああ大丈夫だ」と思った。心に一点の曇りもなかった。合格を確信した。その日の夕方、報告に来た君が、例によって、「国語が難しかったです」という感想を述べた。それも予定通りだった。全く不安は感じなかった。
3年間よく成長した。そして、おそらく、次の3年間でもっと成長することだろう。少年から青年へと大きく飛躍する3年間になることだろう。

 そして、不合格になった二人。
 よく頑張ってくれたのに、すまない。
 君たちが「英作文が、、、」と異口同音に口にしたとき、僕の「失敗」が手に取るようにみえた。合格するはずの生徒が失敗したら、それは、塾屋の責任だ。失敗するとしたら、「英作文」であろうことは、洞察できていた。できていたのに、ちゃんとした対策を怠った。今更何を言っても始まらないのだが、、、。
 20年も塾屋をやってきて、なんたる失態であることか。
 3年リベンジ計画の破綻を繕う言葉はない。
 なんどもなんども高い壁に跳ね返されながら、乗り越えて乗り越えて、ここまで来たのに本当に残念だ。
 胸中にうずまく複雑な思いを表に出すこともなく、今夜も次の準備に励む君たちはたいへん立派だった。
 あらためて言おう、君たちはよく頑張った。