茂木健一郎の追っかけ

 と言っても、彼の専門の「脳」の本ではない。
 日頃、TVから遠いところにいるので僕が知らなかったNHKの「プロフェッショナル」という番組。茂木氏が進行役で、各界のプロフェッショナルたちを紹介している。本を手にいれてから、そういえば、この人のことは生徒が話していたなぁ、とか、この人は家人がこの前教えてくれた人だよなぁ、とか、結構、身の回りで、話題になっていたのに、いつも「ふぅーん」ですませてしまっていた。ぁあ、この勘の鈍さ。前回、茂木健一郎氏の本を読みながら、朝日新聞の土曜版で紹介された人物たちを思い出し、「ジグソーパズルが完成した」気分になっていたけれど、なんのことはない。プロフェッショナルと認定された方々を茂木氏がみずからコメントしながら紹介されているんだから、完璧だ。
 ちょっと前までは、努力・根性・意欲という精神論で語られていた、実社会での成功のための条件が、脳の働きから分析されていくスタイルが、とても新鮮で新しい。基調にある、愛、夢、希望、理想という陳腐な言葉たちも「脳のはたらき」というステップをふむことで物語が「演歌」にならずにすんでいる。
 しかし一つ間違うと、形をかえた精神論になる危うさからどこまで自由でいられるか、きわどさも残る。心の問題=脳の問題という魅力的な課題の探求は始まったばかり、という気がした。

 第一巻 岡大医学部にいらっしゃる小児心臓外科医 佐野俊二氏の一瞬の判断力を語る言葉が重く厳しかった。
 第二巻 この四巻のなかで一番おもしろかった。量子物理学者の古澤 明氏が語る野茂英雄のエピソードには共感できた。研究の中身は僕にとってはすでにSF。弁護士宇都宮健児氏の強さは僕にはない。
 第三巻 塾・予備校講師 竹本広信氏に羨望の念を抱くけれど、しょせん器のちがい、くらぶべくもない。
 第四巻 建築家 中村好文氏、こういう方に家をたてていただきたいなぁ。 

プロフェッショナル 仕事の流儀〈1〉リゾート再生請負人・小児心臓外科医・パティシエ プロフェッショナル 仕事の流儀〈2〉 プロフェッショナル 仕事の流儀〈3〉 プロフェッショナル 仕事の流儀〈4〉