「親」や「家族」にくるまれ、守られている状態から、やがて「旅立つ」時がくる、さて、その時、君はどんな気持ちになるだろう、不安だろうか、よろこびだろうか。
尋ねられた生徒はしばらく考えていた、いつになく真剣に。そこで、不安と喜びが半々ぐらいかなぁ、と水を向けると、「恐い気持ち」の方が大きい、と実に素直に回答した。あぁ、成長したなぁ、と思った。
ひょっとすると、僕がぜんぜん気づかないうちに、この子は自分を客観的に見る視座を構築していたのかしら。無分別かつ無思慮と天真爛漫の境界線上を行ったり来たりしていただけの子が、嘘偽りのない自分の姿を思い描き、何のためらいもなく言葉にできたことに深く感動した。
さて、この「旅立ち」という言葉を別の2字の熟語に置き換えると何になるだろう。
誰かが「家出」と叫び、クラス中が爆笑した。不安を抱えて家を出るのであれば、確かに「家出」になるだろう。
ちがう。そんな不健全な行動じゃない。いずれ、君たちは親離れし、ご両親は子離れする、それはごく自然なことなんだよ。今、君たちは何から何まで親に依存しているけれど、いずれそうでなくなるときが来る。それを2字の言葉でどういうか、考えてごらん。
成長!
進歩!
なかなか近いところまでは来るのだけれど、正解に届かない。
じゃぁ、ヒント!上に「自」がつく。
自覚!
ちがう!
自習!
ちがう!
自立!
正解!!!
いずれ、君たちは自立する。上手に自立するためには、少しずつ、親に頼らないようにしていかなきゃいけない。何かあったら、すぐに「お母さーん!」とか「ママァ!」とか言ってちゃダメだ。「このマザコン!」っ言われたくないだろう。
いいかい、依存するから支配される。君たちは親の言いなりになりたくはないだろう、でも、何でもかんでも頼っていたら、言いなりになるしかない。頼っているくせに「うるせぇ、クソババァ」とか言うのは間違いだ。ええぇっ?もう言ったことある?とんでもない間違いだ。何から何までお世話してもらっているのに、そんな発言は許せない。絶対しちゃだめ。
上手に親離れしていくんだぜ。あまり面倒をかけないようにしていくの。時間をかけて上手に自立していくの。
ということで、きょうの国語はおしまい。