行雲流水曜日

秋晴れの一日であった。二号線でスパシオのルーフウインドをあけて空を見上げた。いわし雲が美しくながれていた。寺山修二さんが作詞した「戦争は知らない」を思い出す。そしてフォーククルセダーズの加藤和彦さんのことを考えた。
いつもカッコいい人だった。肩の力を抜いて素直にその意見を聴ける先輩、そんなイメージの人だった。実際には一回り年齢が違うので、先輩というより叔父さんというべきかもしれない。親戚にもしいてくれたらどんなに嬉しかっただろう。
「あの素晴らしい愛をもう一度」を数え切れないくらい歌ったことがある、と口にするのはなんだか恥ずかしい。でも、「ああ、お前の好きな歌のひとつだったな」と古い友人たちから言われるのは間違いない。目に映るもの、耳に響くもの、ありとあらゆるものに過剰な意味を見出しては、自滅的に情緒不安定になっていたころ、この旋律と歌詞に触れれば誰だって一発で虜になっただろう、と思う。
その歌にはあまりに思い出が多すぎて言葉にできない、という歌があるとすれば、これがその歌になるだろう。
言葉にできないものをまだ自分が抱えていることにあらためて気づいた一日だった。

加藤さんのご冥福を祈りたい。
合掌